表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/54

第十三話 正体に迫る

 希美は、酒井坂総合病院の内科にいた。

 前原が診断している。

「時々胸が苦しくなるんです」

 目が虚ろな希美。

「薬の効果が切れてきたんでしょう。すぐによくなりますよ」

 立ち上がると、注射器を用意する前原。一瞬鬼のような目となるが、希美は気づかなかった。


 病院から出てくる希美を、遠くから見つめる悟がいた。

「やっぱり、ここか」

 希美の行動を探っていたらしい。

 その希美の背後には、妖気とも思えるオーラが見えていた。


 霧生ハウジング。

 社長室で氏神に報告を済ませた悟、事務室に戻ると舞華と会話した。

「どう? 久しぶりの探偵業は? 元霊界探偵さん」

 フンとそっぽを向く悟、相変わらず仕事嫌いな男だ。

「この後は?」

「僕の役目はここまで」

「助けないの?」

「痛い思いはしたくないからね」

「冷たいのね」

「よかったら、ご自分で……元シティーポリスの舞華さん」



 夜の街を花見と三奈は走った。

 途中、炎上する車を見かける。

 緊急車両が出動していた。


 花見と三奈はコンサート会場まで来た。ライブハウスと違い、かなり広い場所で、希美がボーカル・カリアとして歌っている。

『狂った果実が……壊れて実る儚い世界……地は避け……魔物は永地を求め……破壊を繰り返す』

 カリアの歌が、呪文のように人を狂わせていく。

『行け……魔物となって……食いちぎれ……獲物はそこだ』


 一斉に、花見と三奈に注目が集まる。

 歩き出す人々。

 花見と三奈を追いかけてくる

「逃げないと」

 花見と三奈も走り出した。

 魔物メイクをした人々の足が速い。

 追いつかれる。

 花見は、霊象波で人々を後方へ吹っ飛ばした。

 前からも攻めてきた。

「どうしよう」

 立ち尽くした。


 うむ!?


 目の前で、人が倒れていく。


 なに!?


 舞華だった。

 舞華の蹴りが、魔物メイクの集団を倒していく。


 さらに強烈なパンチ。

「舞華さん……」

「これでも元シティーポリス」

 蹴りが炸裂。

「はやく逃げて」

「うん」

 三人は、会場から脱出した。



 霧獣院ハウスの表札を月光が照らす。マンションは夜霧に包まれていた。

 集会室にいたのは、花見、烈司、キシム、優香、古都音だった。

「このままでは奇怪な行動をとる人たちで溢れかえる」

 花見は真相を話し、助けを求めた。


 そして、作戦を実行する。



 酒井坂総合病院。まずは、患者として古都音が潜入した。


 病院の許可を取り、ロビーで古都音の演奏が聴こえるようになった。

 患者たちが癒しを求めて集まってくる。

 穏やかに病状の回復が見える患者もいる。


 一人だけ、苦しそうな顔をしている男がいる。

「頭が割れそうだ」

 前原が髪の毛をかきむしる。


「なんですか?」

 近くを通る看護師に訊いた。

「外科の治療でお見えになったバイオリニストの音無さん」

「患者か?」

「院長の許可もあって、無料で演奏をしてくださると」


 頭が……狂いそうだ。


「いい音色ですね」

 看護師は、前原の正体を知らない。ただ、古都音の演奏に仕事の疲れも忘れてしまいそうで……。

「しばらくこの病院に?」

「たぶん、2、3日入院の予定です」


 この騒音が、続くのか……どうにかしなければ……。


 前原は、その場を逃げるように去る。思考力が乏しい状態で廊下を歩いた。

 途中よろけて壁にぶつかる。

「大丈夫ですか?」

「うるさい!!」

 若い医師を怒鳴りつけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ