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それぞれの、バレン・タインデイ ⑤ エレナ

「エレナ嬢、バレン・タインチョコレートありがとう」


「はい?」


「君がくれたと知って、とても嬉しかったよ、良かったらこの後……」


「あの、すみません。私は貴方にチョコレートをあげていませんよ?」



 突然見知らぬ方に声を掛けられた。

 相手は私の事を知っているみたいだけど、話の内容に心当たりはなかった。



「え!でも、メッセージカードに、私の事が好きだと」


「それ、"エレ"さんじゃないですか?」


「ああ、あなたのエレより。って、だからエレナ嬢だと」



 またか、これだけ被害があると、愛称だけで手紙書かないでって抗議した方がいいのかもしれない。



「私は手紙には、"エレナ"と書きます。そのメッセージは、第八クラスのエレーナ様だと思いますよ」


「第八……。あぁ、彼女か、失礼しました。貴方だと思って嬉しくて、確認不足でした」


「直接渡されたわけでは、ないんですか?」


「はい、ピンクの髪の可愛らしいご令嬢が持って来たと、人伝に渡されました」


「そうですか、また間違えてしまった人を見かけたら言ってあげて下さい、私は友達にしか渡してませんって」


「わかりました、では、改めて私とこの後、」



 まだ名前も知らない人に、何か誘われそうな雰囲気を感じて身構えた。

 どうやって断ろうかと考え始める前に、明るい声が耳元で聞こえた。



「あれ、エレナちゃん?どーしたの?」


「きゃっ、サージス! 貴方こそ一年生の廊下で何してるの?」



 彼は突然私の左肩を掴んで、右から顔を覗き込んできた。

 驚いたけど、声ですぐサージスだと分かって安心した。

 心配そうな彼と目が合った。

 近い!!



「ちょーっと、通りかかって、ね」



 私の肩を抱き寄せたまま、サージスは名前を名乗らない令息の方を見た。



「サージス……ス、スワリエ侯爵令息?!」



 名無しさんは、顔色を変えて姿勢を直した。

 サージスの事を知っているみたいだ。



「ん?何か?」


「いえ、失礼しました!!」


「はいはいー。タリル君、お父上によろしくね」


「はい、失礼します」



 名無し改め、タリル君?は軍隊の行進のように、規則正しい歩調で去って行った。



「サージス、今の人知っているの?」


「フィザード子爵家の次男だよ」


「フィザード子爵って、侯爵家分家の?」


「正解!さすがだね」



 タリル君は、スワリエ侯爵家の分家筋の方だったのか。

 辺境伯は基本国の守り。

 騎士に兵士に傭兵にと完全縦社会。

 分家はどうやっても、武力も発言権も本家には敵わない。

 上司と部下みたいな関係だ。



「ありがとう、助かりました。またエレーナ様に間違えられたみたいで」


「いやーある意味、みんな願望に忠実だよね。気持ちは分かるから、あまり責められないんだけど」


「どういう事?」


「婚約者と一緒に突撃してくる人達は別だけど、決まった相手がいない人は、ピンク髪の可愛いご令嬢と聞いて、エレナちゃんだったらいいなー。と思って来ちゃうんだよ」


「ちゃんと確認してきてほしいです」


「ダメだよ、確認したら違うって分かっちゃうから」


「なら何で」


「彼等は夢を見てるんだよ」


「?」



 サージスは、どこか遠くを見つめながら、私の右肩をポンポンと二回軽く叩いて、私を抱き寄せていた左手を放した。



「虫除けが欲しかったらいつでも呼んで!僕がすぐ駆けつけるから、まぁ、呼ばれなくても駆けつけるけどね」


「ふふっ、呼ばなくても来てくれるんですか?」


「そうだね、でも呼んでくれると嬉しいなぁ」


「ふはっ、嬉しいってーー」



 彼がいつもの軽い調子で言うから、私は思わず笑ってしまった。

 そして、ふと彼の方を見ると、いつもの笑顔が消えていた。



「僕を呼んで、必ず助けに行くから」


「!!」



 普段見慣れない真剣な顔をした彼と目が合った。

 何故か逸らすことが出来ずに見つめ合う。


 私がどうしたらいいのか分からなくなって、困った顔をすると、彼はいつものように笑って私に同意を求めた。



「ねっ?」


「はい」



 有無を言わせぬ笑顔って何?

 私は初めてそれを体験した。

 肯定の言葉しか発する事ができなかった。



「よし!じゃあ、エレナちゃんまたね」



 明るく笑って手を振りながら彼は二年生の教室に帰って行った。


 え、待って、私は今何を言われたの?

 あれは、本当にサージスだった?


 何かちょっと……。

 いえ、だいぶ?素敵に見えたんだけど。


 実際彼は、呼ばなくても助けに来てくれた。

 呼んだら本当に、来てくれるのかな?


『僕を呼んで、必ず助けに行くから』


 忘れないように、何度も彼の言葉を思い出した。

それぞれの、バレン・タインデイ⑤

まで書いて思った事。


やっぱり、エレナ、サージス、メリサ、ディメオス

この四人のわちゃわちゃが、

どの組み合わせでも書きやすい(笑)


会話からどんどん出来上がっていきます。


むしろ、会話だけなら止まらない。



いやー楽しかったです。

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[良い点] 胸熱な青春ストーリー! 恋の日は大事! (*゜∀゜)*。_。)*゜∀゜)*。_。)
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