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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  3月
99/1001

ほめられたこと

 今朝の4時頃に目が覚めてしまい、ふと、なんの脈絡もなく思い出したことがあります。


 私は、今でこそこうして毎日何かを書き散らし、


「書かないと死ぬ病」


 を標榜(ひょうぼう)していますが、これは今世紀になってから、


「サイト作ったったぞ、日記作ったったぞ、書け!」


 と、小説を書いたことをカミングアウトしている人の一人、D氏に強制されてからでした。


 それ以前は、頭の中に書きたい物語は(あふ)れてる、本なしではいられないなタイプではありましたが、文字を書くのがとても苦手で、日記すら三日坊主でやめてしまっている状態でした。


 それがなんでこうなっているかと言いますと、「書く」のではなく「打つ」になったからです。タイピングだったらいくらでも、なんぼでも、際限(さいげん)なくやってられます。

 もっとも、右肩を痛めてから、それも多少の制限ありの状態で、ですが。


 小学校に上がってからは、何度か市や学校の文集に載ったことはありますが、それだけ、表彰されたこともないし、文章を書くのは宿題とか、書かないといけない時ぐらいです。


 それが、大学の時、一度だけほめられたことがあったのを思い出しました。


 大学の教養で「日本文学」「東洋文学」「西洋文学」のうちから選んで一つ取る必要があり、一回生の時に日本文学を履修して単位は取っていたんですが、三回生の時だったかに中国から客員教授が来られたので、面白がって友人たちともう一度東洋文学をとることにしました。


 ある時、その授業で中国の演劇、いわゆる「京劇」のようなお芝居を大学が誘致して見る機会があり、東洋文学を履修している学生はレポートを出すことになりました。


 ある授業の後、いつものように友人たちと片付けおしてていたら、その客員教授が階段教室の中程にいた私達に近づいてきて、私に、


「一緒に中国に行きませんか」

 

 と、いきなり声をかけてこられて、みんなでびっくりしました。


 その時にどういう話をしたのか、もうしっかりと覚えてはいないし、その後もその教授と特に懇意(こんい)になるということもなかったんですが、その理由がその時のリポートでした。


 その教授がある大手新聞にコラムを連載されていて、そこに、


「中国の演劇と歌舞伎の比較論文を書いてきた学生がいて、それが素晴らしかった」


 みたいに書いてくださっていたのが、私のレポートだったんです。


 今思えば、あれってかなりかなり、ほめてくださっていたんだなあ、と、今朝いきなり思い出していました。


 もしもあの時、一緒に中国に行ってたら、今頃もっと違う人生を歩んでいたんでしょうか?

 

 人生の選択は、いつも今がベストと考えていますが、それでもちょっとだけ思ってしまいました。

 あまりほめられる経験がないもので。

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