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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  2月
98/1001

祖父の命日

「2月20日、今日、おじいちゃんの祥月命日や」


 日付を見てそれを思い出しました。


 祖父は私が高校2年の時に亡くなりました。

 うちは関西、祖父のいる父の実家は四国で、そのいなかに行ったことがあるのは小学校3年か4年の時に一度だけです。

 父の仕事が忙しくてなかなか休みが取れなかったことや、元々あまり出かけるような家ではなかったことがその理由のようです。同級生が毎年のように旅行に行くという話を聞いて、いいなと思っていましたが、おかげで私も出不精で、休みになると寝てる方がいい、という感じに育ってしまいましたが。


 なので、生前の祖父に会ったのは一度だけです。

 いなかの本家や他の親戚とも、電話や荷物のやり取りや色々な交流はしていたので、みんな仲が良かったと思いますが、上に書いたように、いなかに行くことはありませんでした。


 その日、祖父の具合があまりよくないとは聞いていたのですが、高校の「3年生を送る会」があり、電車に乗って市民会館まで映画鑑賞に行くことになっていました。

 まだどうなるか分からないし、行っておいでと、私も一つ年下の妹も送る会に参加して、終わって連絡したら、祖父は亡くなっていました。それで帰ってすぐにいなかに行くことになりました。


 兄弟姉妹が多く、末っ子の父の子として生まれたもので、いなかに行くと混乱します。

 一番上の伯父と父は親子ほど年が離れていて、その息子であるいとこの子が私より年上、いとこの一番年上が父と同級生、という感じですから。


 葬儀の前に火葬をすることになり、いなかの小さな火葬場に親族たちが集まり、当時、病気であまり体が自由にならない伯父ではなく、その息子のいとこが火を入れることになりました。


 私達も立ってその様子を見ていたんですが、ふと、気がつきました。


「そうか祖父は父にとっての父なんだ」


 頭では分かっていたんですが親って他の親族よりつながりが密なんですよね、一親等の2人は。

 

 祖父はもう一段階上の人なので、その分距離があるように思っていたのに、父にとって祖父は一親等、私から見た父なのだと思うと、なんだかとても不思議で、同時になんとも言えない気持ちになったのを覚えています。


「ああ、この人は親を亡くしたんだ」


 父を見てそんな気持ちになりました。


 母の両親、父の母も私が生まれるずっとずっと前に亡くなっていて、唯一、親の親であった祖父が亡くなったんだなと思うと、もっと色々と話しておきたかった、とも思いましたが、それよりは親を亡くした父を不憫に思う、そんな気持ちが大きかったように記憶をしています。

 

 今頃はあちらで親子でどんな話をしているんでしょうね。

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