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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2024年  9月
894/1001

汁を飲まなければ大丈夫

挿絵(By みてみん)


 お彼岸なので妹一家が来ると思うんですが、今日の土曜日じゃなかったら私は休みで実家には行かない予定です。それでいつ来るかを聞きました。


 休みの日に実家に来る時は、勝手に鍵を開けて中に入り、お仏壇の方々と一緒にご飯を食べたりお茶をしたりして帰るので、ほっといていいんですが、今回は聞いておかないといけない事情があったんです。


 あるお菓子をお取り寄せしておいたんです。


「鶴屋吉信のつばらつばら」


 父親がここの「京観世」というお菓子が大好きなので、誕生日とかには買ってたんですが、「つばらつばら」もおいしいので、今回はそれをお取り寄せしておいたんです。普通のと、秋の栗のやつを人数分とお仏壇に置く分だけ。そうしたら、栗の方の賞味期限が22日の日曜日までだった。


「土曜日に来たらそのまま出せるけどどうしようか」


 そう思って、なるべく涼しい場所に置いてはいたんですが、何しろこの暑さなので置いて帰るのに気になって気になって。私が帰ったらエアコン切れて暑くなりますからね。それでいつ来るかを聞いたわけです。


 そうしたら「23日」と返事があったので、


「実はこれこれで22日までなんだが、どうしよう」


 と聞いたら、妹からメッセージで、


「大丈夫や! 汁飲まんかったら(byじいちゃん)」


 との返事がありました。


 とりあえず大丈夫というので味が落ちるの覚悟で冷蔵庫に入れておくことにはなったんですが、汁を飲まければ大丈夫というのがよく分からない。それで理由を聞いたらこんな話があったらしい。


 もうずっと前の話らしいのですが、古くなったパイナップルの缶詰を妹が大丈夫かなあと言ったら父親が、


「大丈夫大丈夫。でも汁は飲んだらあかん」


 と、言ったらしい。


「謎の理論」


 と妹がまた送ってくるので吹き出してしまった。

 

 缶詰は基本、真ん中が盛り上がってなかったら、ちゃんと脱気され続けていたら大丈夫なので、多少日付が古くても私はあまり気にせず食べます。非常用に買ってある甘い缶詰なんて、気がついたら日付が過ぎてるなんてことしょっちゅうですが、そういうことであまり気にしてません。賞味期限が切れたら食べて新しいのと入れ替えますが、毎日食べるものでもないのでそういうことはあるものです。


 だけど、


「汁だけ飲まなければ」


 って、その汁につかってるパイナップル本体、汁が飲んではだめなぐらい痛んでたら本体もきっとだめになってると思うんですが、一体どういう理屈なんだとメッセージを読んで吹き出してしまったというわけです。


 妹が言うには結局その日も食べたそうなんですが、


「いいつけを守って汁を飲まなかったので無事だった」


 とのことで、その答えにまたまた大爆笑! 大笑いしてる私にまた妹から、


「もし汁を飲んでたら今の私はなかったやろな」


 で、もう息が詰まるほど笑った笑った。


 しかし、そういう話は初めて聞いたのでそう言ったら、かなり前の話らしく、


「それ以来うちでは古いもの食べる時に『汁飲んだらあかんよ』と言ってるのでみんな元気だ」

 

 との言葉で私はとどめを刺されてしまった。


 私が知らなかったということを知った妹からは、


「そうか、今からでも実践しぃ」


 と言ってきたので、


「分かった、父親の言いつけ守る」


 ということになりました。


 妹がなんでか理由を聞いたけど、理由は教えてくれなかったらしいんですが、真顔で「でも汁は飲んだらあかん」とだけ言っていたらしい。


 なので理由は分かりませんが、これからも古い食べ物は、


「汁は飲んだらあかん!」


 これを小椋家家訓として残していきたいと思います。

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