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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2024年  8月
863/1001

43年待ちのコロッケ

「これもう不可能だろう」


 と、ここにもちょこちょこ登場するH氏がつぶやいていました。


 何かと言いますと、ある有名なコロッケの予約状況です。


「現在お届けまで43年待ち」


 いや、確かにもうお届けするのは不可能に思える。


 私もこのコロッケの存在は知ってました。私が知った段階では、確か十数年、13年か14年待ちだったと思います。なんでそんなに待つかと言うと、使ってる肉が特別だったかなんかだったはずです。


 ある関西のテレビ番組で、そのコロッケをお届けするという家庭を訪ねたら、ものすごく幸運というか、そのお宅が心が広いというかで1個分けてもらってました。それをスタジオでサイコロ転がしたんだったかな、そうして一人だけが食べられるというのをやっていて、なんとその番組のMCと言っていいのかそのアナウンサーが食べることになりました。もちろんおいしいと言っていた。


 それからどのぐらいか忘れましたが日数が経ち、今では43年待ちという状態にまで予約が増えてる。う~ん、みんな根性あるな。私は絶対無理だ、そんなに待つの。


「もういっそ予約やめればいいのに」


 H氏とそう言ってたんですが、実際に一度は予約受付をやめたようです。その段階で13年か14年と言いますから、私が見たのがその頃だったかも。もっと最近だった気もしますが、とりあえずそうやってやめたんだそうです。

 ですが、一度食べた方から「もう一度食べたい」「値段が上がってもいいからぜひ予約再開を」との声が上がり、予約受け付けを再開したとか。う~ん、やっぱりみんな酔狂というか、再予約しても自分が食べられるかどうかも分からないのにチャレンジャーやなとも思います。


 もしも、


「ばんざい、僕の子どもが生まれたぞ! 記念にこの子のためにコロッケ予約してあげよう!」


 と予約して、その子(男の子とする)が成長し、学校へ行って卒業して、社会へ出て、結婚して子どもができて、その年齢だと中間管理職とかになってて「課長」とか「部長」とか呼ばれる年齢になったある日、


「ご予約のコロッケをお届けします」


 という連絡が来たら、どんな気持ちなんだろうと思います。


「親父が俺のために」


 と感激するのか、それとも、


「いや、そんなこと言われても」


 と困惑するのか。


 まあ、どちらにしても、ずっと父親から「このコロッケはな」と聞かされてるでしょうから、なんらかの感慨はあると思います。もしも、その時にもう父親が亡くなっていたとしたら、遺産の一つという気持ちになるかも。


 そしていざ、そのコロッケを食べる。


「うまっ! これはうまいわ! もう一回食べたい! というかうちの子のためにも予約してやりたい!」


 そう思って予約しようとしたら、きっとその頃には100年待ち超えてると思います。


 面白いですね。食べたことはないですが、43年待ちと聞いただけで色んなお話を想像することができます。それだけでも楽しいので、これからも予約受け付け続けてほしいなあ。


 あ、私は「いらち」でそんなに待ってられませんので、もしも予約するとしても、そのお店の他のコロッケにします。他のコロッケも充分おいしそうだったので、私はそれで充分以上だと思いますから。


 でも気にはなりますよね、43年待ちコロッケ。どんな味かなあ。

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