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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2024年  8月
845/1001

人を殺してはいけない理由

 今の朝ドラにちょっとばかり問題のあるお嬢さんが出てきます。その人が予告でこんなことを言ってまして、今日、そのシーンが出てきます。


「どうして人を殺してはいけないんですか?」


 これはなかなか答えるのが難しい問題だと思います。そう聞かれた主人公もすぐには答えが出せないと言ってましたが、まあ当然でしょう。


 みなさんも一度はそんなことを考えたことがあるんじゃないかと思いますが、私なりの答えを書いてみたいと思います。正しいとか間違えてるとか、そういう結論の出る問題ではありませんので、こいつはこういう風に考えたんだなと思って軽く読んでいただけると助かります。私だってこれを書いている今はそう思っていても、1分後に「やっぱり違うわ」と考え方が変わるかも知れない。そういう難しい問題ですから。


 自分ならどう答えるかなと考えて、今のところだとこうかなと思いました。


「それはルールだから」


 他の国や他の星は知りませんが、私が今こうして属している日本という国のルール、法律では、


「人を殺してはいけませんよ」


 と決まっています。だからそのルールを破るようなことをすると、なんらかの罰則を受けるわけです。単純ですが、まず第一に答えられるのはそれだなと思います。


 それより深く「じゃあその理由は」と聞かれたら、それはまあ色々とめんどくさくなりますよね。神様がーとか、倫理がーとか、その他にもなんやかんや、上げようと思ったらいくつも理由は上げられますが、どれを上げても結局は「これだ!」という答えにはならないと思います。

 

 ではなぜルールが存在するのか? それは社会を営んでいくのに必要だからです。


 誰でも彼でも好きな時に好きなように誰かを殺していい社会は安心して暮らしていけません。だから社会をきちんと運営するために色々なルールが決まっています。車は左、人は右と通る場所を決めているように「これはこうしましょう」「これはこうしてはいけません」と細かく決まっていて、それに反してしまったら、わざとだったか不可抗力だったか、どの程度責任があるのか、そういうこを判断するために裁判をしたりもします。


 それからルールが存在するのは人間社会だけじゃないです。動物だって虫だって、色々な自分たちのルールに従って生きています。そのルールに従えないものは社会から追い出され生きていけなくなることもあるんです。つまり、たった一人たった一匹だけで何者とも接触せずに生きていくので無い限り、なんらかのルールの元で生きていく必要があると言えます。


 だから「人を殺してもいい」という職務の人がその仕事の上で人を殺すことは罰せられません。例えば刑務官は死刑を執行しますが仕事だからです。警察官も場合によっては向かってきた凶悪犯を銃で撃って殺す可能性はあります。自衛官もありますが今のところ実際に自衛官がそういう職務に就いたことはないように記憶しています。

 つまり今の日本という社会に属していて合法的に人を殺せる人になりたいのなら、刑務官か警察官になるのが現実的ですが、正直に「人を殺したいので刑務官か警察官になりたいです」と言う人が採用されるとはちょっと思えませんね。


 また違う形でなら合法的に人を殺せる可能性はあります。どこかの軍隊に属して戦争に参加することです。本当はいいとか悪いとかは別にして、実際に紛争地域に行ってそういう立場になる日本人もいるらしいとは耳にすることがあります。その場合はその地では「人を殺してもいいルール」が存在しているので、堂々とそういう事ができる可能性はあります。「フランス外人部隊」なんか有名ですが、これはフランス軍所属の「傭兵部隊」になります。少し前にロシアのそういう部隊が有名になりましたが、いくつもそういう組織は存在しています。もちろん、そこに入ったら自分が殺される立場になる可能性もあるわけですので、そういうのを覚悟の上でなら堂々と殺人ができます。


 つまり、


「どうして人を殺してはいけないか」


 は、やはり、


「そこに人を殺してはいけないというルールがあるから」

 

 なんだと思います。

 

 それ以外では、


「神様がだめだと言ってるから」


 なんて答えもあるかも知れませんが、実際に神様に聞いたわけじゃなく、そうあってほしいという願望の方が強いんじゃないかと思います。もしも実際に神様に聞いたら、


「え、いいんじゃないの? 人間増え過ぎだし、多少そういうことやって強いのだけ残った方が色々やりやすいかも」


 なんて返事が返ってくるかも知れない。


 もしもそんなことになったら、道を歩いていていきなり知らない人に、


「どっちが強いか殺し合いしようぜ」


 なんて戦いを挑まれる可能性があり、そうなったら人という個体としてはかなり弱く、低レベルにいる私なんかイチコロなので、できれば今のままのルールがこれからもずっとありますようにと祈らずにはおられません。


 そしてある映画の名台詞にこんなのがあります。


「1人を殺せば悪人だが、100万人を殺せば英雄」


 チャップリンの「殺人狂時代」のセリフですが、古今東西を見ても本当だなと思うしかありません。過去の英雄はまさにそういう人たちですから。


 そうしてたくさんの方が亡くなるようなことが、もう二度とありませんように。「殺されない」という最低限のルールが守られる世の中でありますように。


 わざとなのか偶然なのか分かりませんが、そんなことを考えないといけないこの日にそのセリフを入れてきた「寅に翼」はやっぱりちょっとすごいのかも知れない。

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