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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2024年  7月
825/1001

「いじり」と「いじめ」と「おちょけ」の間

 今日は少し用があって、いつもよりちょっとだけ遅く家を出ました。


「その前にゴミ捨てだ」


 金曜日は燃えるゴミの日、あまり量はなかったけど、この季節です、今度の火曜日まで置いておくこともできないので、青いビニールにちょびっとのゴミを恨めしくチラ見しながら、マンション前の集積所に持って出ました。


 戻ってマンションに入ろうと振り返ると、そこには中学生らしき男子が3人。大きなバッグを肩にかけ、なんだかんだ話しながらマンションのエントランスへと進んでいくのが見えます。

 あまり早く戻って入るのが一緒になってもなんだからと、ちょっとだけゆっくり歩きにして、あちらが先に入るのを待とうと思いました。別に一緒になってもいいんですが、やっぱりそういう時はちょっと気を遣います。


 そしたら会話が聞こえてきたんですが、1人が、


「この間も◯◯したやろ、もうやめてやー」


 と、何をしたのかは分からないですが、2人に向かってそんなことを言っているのが聞こえてきました。


「熱中症対策やん」


 と2人がまた何か言って、どうやら最初の子はマンションの住人で、残り2人はくっついて入りたそうにしている感じ。


 エントランスを入ったところにちょっとしたスペースがあり、そこに座って子どもたちが遊んでたりすることもあります。家にあげるほどじゃないけど、何かちょっと話をする人なんかもそこに座って話してたりしてるのも見ますね。

 特に冷房が入ったりではないんですが、今の時期はまだエントランスに入ると空気がなんとなくひんやりしてるので、おそらく中に入って一度休みたいんじゃないかなと思いました。


 そういや今日は終業式、えらく早い時間に帰ってきてるな、私の時はどうだったかと考えたんですが、うちのマンションから中学校はすぐ近く、もしも10時に終わってたらそりゃもう帰って来る時間だなと気がつきました。うちの中学はえらい坂の上で、行くのに小一時間かかってましたから、その感覚でいるとそりゃ早いなとなるわな。


 そして同時にあることを、ふと、思い出しました。


 3人組のこちらは高校生ですが、1年のクラスにいたちょっと「おちょけ」の2人組と、その間にはさまれた「金子君」の話です。普通はこういう時に名前を出すことはしないんですが、今回はこの人の名前を出さずには話が通じないのであえて出します。


 その2人組はそんなにひどく暴れたりとかじゃなく、いつも2人でくっついてケラケラ笑ってるような子たちだったんですが、出席番号順に並ぶと、たまたま金子君の前と後ろに並ぶ形になってました。

 そうしたらその2人で大人しい金子君をいじるわけです。私もそこそこ出席番号が近かったので、その様子が目に入り、なんとなく「うざい」ぐらいに思ってました。

 

 そんなにひどくいじめたりではないんですが、何しろ金子君が大人しい。1年間同じクラスになって、私も話した記憶がありません。きゃっきゃ言ってる2人に挟まれて、いじられてもじっとしてるだけ。

 これが金子君も一緒になって、今朝の中学生ぐらい「やめろよ」と言えたらよかったんですが、何も言わずにじっとしてるので、時に不快に感じていたように思います。


 そんな感じだったんですが、ある時、この時だけは思わず笑ってしまいそうになり、その2人に「ウケた」と思われるのが嫌で、必死に我慢したことがありました。


 2人がいつものように金子君にくっついたりからんだりしながら、確か後ろのK君だったと思いますが、こんなことを言ってからんだんです。


「金子~金子~おまえが将来結婚して、相手の女の名前が「かねこ」やったら「金子かねこ」や~」


 ツボりました。めちゃくちゃきて、吹き出しそうになったんですが、ここでウケたと思われたら、また金子君に対するいじりがひどくなるし、ならなくても「おちょけ」がひどくなる。そう思って耐えました。


 こういうのって、同じことをしてもやられる相手によって変わってくると思います。もしも金子君が「なんやねんそれ」と言えるような子だったら、私も思いっきり笑ってた気がする。


 この2人組も決して嫌な子ではなくて、楽しい子たちでしたが金子君に対しての態度だけ見ると、やっぱりちょっといじりにしては度が過ぎてたんじゃないかなと、思う部分があります。相手によるんですよね、こういうのって。

 

 3人共どうしてるのかなあ。同窓会にも行かないし、全く分かりませんが、3人とも元気で幸せであってほしいものです。そして金子君の奥さんの名前もちょっと気になったりもしています。

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