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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2022年 12月
80/1001

叔父の旅立ち

 叔父が亡くなりました。

 母の弟で、母の兄弟姉妹、最後の一人でした。


 今年の2月、父が亡くなる少し前に叔父の病気が見つかり、最初はそこまでと誰も思っていませんでした。

 父の葬儀の時には「手術前」、今の時世、県を超えてこちらまで来ることはできず、慕ってくれていた父のお別れに来ることもできずにいました。

 

「四十九日にはおじちゃん来られそうかな」


 妹とそう言っていたんですが、実は「手術」と思っていた処置が「組織検査」で、その結果が悪く、「今度はこれ」「今度はまたこれ」と、聞く度、処置する度にどんどん弱っていきました。

 そして11月の終わりの頃、とうとう力尽き、四国までお別れに行くこととなりました。


 何度もお見舞いにと思ったものの、今の病院は家族ですらほぼ面会もできない状態。


「落ち着いたらまた家にでも」


 そう言っていたことも叶いませんでした。


 やっと対面が叶ったのは、白い箱に入った叔父でした。

 あまりに痩せて、元々細身だった一番上の伯父とよく似ていたことに驚くと共に、「ええかっこしい」のところのある叔父、きっと衰えた姿を見せたくはなかったんだろうなと思いました。


 見上げた視線の先には私が思っていた通り、今まで通りの叔父の姿が。

 遺影も、通夜や葬儀にかける音楽も、そして最後の衣装も全部自分で決めていたそうです。

 大学時代、ハワイアンバンドをやっていて、ハワイが好きで、黒っぽい色目のアロハを着て旅立っていきました。


 多趣味で、凝り性で、愉快で、そしてちょーっとばかり気難しい「へんこつ」な人でした。

 転勤族で長らく関東にもいて、何度も遊びに行ってお世話になりました。

 あちらこちらに連れて行ってくれて、あの有名テーマーパークにはまり、何度も何度も通って細かいところまで見て回って、普通だったら知らないような色々なことを教えてくれました。


 これまで、両親や伯父、伯母、いとこ、色んな人を看取り、お別れをしてきましたが、どの人もつい弱った姿を思い出しがちです。叔父は、弱っていく姿を見ていないこともあるせいでしょうか、元気な姿しか浮かんできません。


「おじちゃん、こっちのおじちゃんをよう覚えとうし、思い出すからね」


 そう言ってお別れをしました。

 悪くないお別れだったと思います。


 普通だったら、ただただ悲しいばかりの葬儀、白い箱に収まった叔父の姿を見て、遺影を見てとしていたら、


「もうそんな体しんどうてかなわん、やっと楽になれたわー」


 との声が、ふと、聞こえてきました。


 今頃は形骸と化した自らを抜け出して、あっちこっち好きに飛び回って楽しんでいるだろうと思います。

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