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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2024年  6月
769/1001

しるなしごまだれいめん

挿絵(By みてみん)


 以前、


「もうこういうのがいいよね」


 というのを書いた時、


「冷やしうどんに乗せる錦糸卵」


 のことを書きました。他の具と違って手間がかかるけどこれだけははずせないと。


 ついでに、時間があったらたくさん作って冷凍したりするとも書いたんですが、一昨日、ちょっと時間があったのでたくさん作りました。そしてそれがあるもので、昨夜のメニューが決まったんです。


「冷麺にしよう」


 ここで私が言う「冷麺」とはいわゆる「冷やし中華」のことです。今はこういうのもテレビやコンビニなんかの影響か全国統一になってきてますが、神戸では昔は「冷やし中華」を「冷麺」と呼んでました。私の友人たちもそうだったと言ってるので、決してうちの家だけとか、思い間違いとかではないです。

 もちろん世間で言われてる「平壌冷麺」みたいなのもありましたが、あまり一般的じゃなかったからかな、どう呼んでたかとかあまりよく覚えていません。そういうのがあるというのは知ってましたが。


 ということで、うちの冷麺を作ることにしたんです。


 最近では2人前の麺とスープが入った袋入りのが売っていて、私もそれを買うことが多いんですが、昨日は、ふと、こう思いました。


「麺だけ買ってスープ作った方が安いんじゃね?」


 そういうことで、中華麺だけ買って帰ったんです。


 冷麺を作る時めんどくさいのは上に乗せる具です。特に錦糸卵が。でも今回はすでにあるのだよ、錦糸卵。それにキュウリも切ったのがある。


 後はハムとか蒸し鶏とかなんかそういうのですが、実はこれもあるのです。前日、「鶏ムネ肉とキュウリのわさびマヨネーズ和え」を作ったのが残ってる。


「わさびマヨネーズ味だけどまあいいだろう」


 と、その残り物も具にすることに決定しました。


「つまり、スープ作って麺茹でるだけ」


 スープは出汁(顆粒だしと水)とお酢、砂糖、みりん、薄口醤油、濃口醤油、ごま油なんかを混ぜて適当に醤油ベースのスープを作り、私はごま風味でいきたいので、そこに練りごまを入れて作りました。

 

 なんですが、練りごま入れて混ぜたけど、分離してなかなかまとまらない。


「少しとろみが欲しいのに、なんでこうなる」


 分離したのを混ぜてもサラサラで分離してるまま。


 しゃぶしゃぶのごまだれとかよりは薄めがいいと思って練りごまを控えめにしたからか、それとも油が入っているからか。ぐるぐる混ぜたけど分離したままなのでまた少し練りごまを足す。やっぱり分離してるのでまた練ごまを足す。

 そんなことを繰り返してたんですが、一向に分離が解消する様相を見せてくれない。


「まあいいか、どうせ自分で食べるんだし」

 

 そう考えて混ぜるのを断念。盛り付けた冷麺と一緒に冷蔵庫に入れておきました。


 さて、夕方になっていざ食べようと出してきたら、


「ぬおっ! なんでこんなこてこてに!」


 なんということでしょう、分離していたごま風味のスープが一体化してドロドロになってる。


「ううむ、これどうしよう……」


 少し考えたんですが、


「まあいいか」


 と、そのままぼてっとどろどろのスープを乗せました。


「味は悪くないし混ぜたらなんとかなるだろう」


 昭和のいいかげん男、植木等さんよりもいい加減な気持ちでぼてっと乗せて完成。


 混ぜながら、


「まるで汁なし担々麺」


 と思ったんですが、食べてみて思いました。


「いや、こりゃごま味のスパゲッティサラダだ」


 と……


 味は悪くなかったんです、ちゃんと味見もしてるし。でも濃度が、濃度が濃いすぎる。

 あまりに濃くてごまスープだけでお腹いっぱいになった気がします。


 今度は分離してもまとまるだろうともうちょい薄く作ろうと思います。


 夏はまだ始まったばっかり、同じ失敗は繰り返すまいぞ!

写真で見て分かるようにこんなにぼってりとしたスープになりました。

こりゃお腹いっぱいになっても当然かな(笑)

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