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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2022年 11月
75/1001

ダフ屋さん・その2

 前回の「ダフ屋さん・その1」と同じ会場なんですが、今回の話は少し離れた待ち合わせ場所でのことです。


 その会場の前の公園の入り口で人と待ち合わせをしていました。

 その時一緒したのは友人の友人で、私はよく知らない人と一緒に行くことになったので、分かりやすい場所で待ち合わせをすることになりました。


 かなり早くに暗くなってきたので、多分季節は秋から冬あたりだったんじゃないかと思います。そこまで寒いと思わなかったから、今ぐらいの時期かも知れません。


 私は公園の入り口、公園に向かって左の柵か何かにもたれて立ってました。


 その反対、公園に向かって右の柵のところには、まだ若いダフ屋さんがいて、定番の、


「チケットあるでーチケットあるでー」


 の掛け声でお商売されていたので、こんな若いダフ屋さん珍しいなと思いながらその声を聞いてました。


 次々と公園の中に入って会場に向かう人たちを見ながら待っていたら、やがてそのライブに行くのと同じぐらいの年頃、まだ若い男性が小走りでやってきて、その若いダフ屋さんに頭を下げました。


 公園の入り口の幅のあっちとこっちに立ってたんですが、まだどういう人か見えていたから、そこまで真っ暗ではなかったと思います。


 そんなに遠くない場所なので2人の話す声が、ふと、聞こえてきたんですが、その内容が……


「兄貴」


 と、若い方が呼んだので、ああ、やっぱりそういう呼び方してるんだなと思っていると、


「おまえ、それ……」

 

 兄貴の方がそう言って言葉をちょっと途切らせました。


「はあ……」


 弟分(と呼ぶことにします)の方が、なんだか申し訳無さそうに弱くそう返事をしたら、続けて兄貴が、


「やったんか」

「はあ……」

「アホ……」


 って、何をやったの!


 横目でちらっと見たら、弟分の左手、兄貴に見せてるその小指に包帯巻いてるー!


 つまり、つまり、やったって、やったって、あれ?


 おーまいがっ!


 この時の私の気持ちが分かってもらえるでしょうか。

 もう薄暗くなってきた公園の入り口で、ちょうど他に誰もいなくて兄貴と弟分のその会話をしっかり聞いてしまい、その包帯を巻いた左手を見てしまった私の気持ちが!


 待ち合わせの人に早く来てー! と思いました。


 と、その願いが届いたのか、


「遅くなりました」


 と、その人が来てくれたので、その先の会話は聞かずに済みましたが、いやあ、妙に生々しい話とか聞くことにならなくてよかったです。


 いえいえ、と何事もない顔をしてライブ会場に向かいましたが、その時にも右手にちらりと見える2人の姿が気になって気になって……


 と、ちょっとばかりびびったダフ屋さんとの思い出、その2でした。

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