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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2022年 10月
69/1001

笑いどころ

 このところ毎年そうですが、夏から秋をすっ飛ばして冬になったような気候に体が付いていきません。


 周囲でも体調不良の人がちらほら。

 体調だけじゃなく、心もなんだかしんどい人も多いようです。


「なんとなく何もする気がしない、落ち着かない」


 テレビで言ってたんですが、今の時期にはやはり多いようです。

 夏の疲れが取れていないのと、日が短くなるとなんとなく気持ちが晴れない。

 急に寒いのは体だけじゃなく、気持ちにもやはり影響するようです。


 桂枝雀師匠の落語のまくらで、


「面白くなくても笑っているうちに面白くなってきます、お互いに努力が必要です」


 というのがありました。


 枝雀師匠のにこにこ顔でこれを言われると、こちらも思わずアハハハと笑ってしまいますが、確かに顔だけでも笑った形にするだけで免疫力が上がるとも聞いたことがあります。


 それで、なんとなく最近しんどいなあ、やる気が出ないなあと感じながら、


「顔だけでも笑った形作るか、口角上げるだけでも違うかも」


 と思いながら、ふと、思い出したことがありました。


 学生だったある時、休日に買い物に出かけました。


 楽しいショッピングならよかったんですが、何かは忘れたけど用事で行かないといけない買い物でした。そしてその日はなんとなくしんどくて、できれば家にいたいなあと思いながら、いやいや出かけました。


 そういう気分だったんですが、


「いかんいかん、せっかく出てきてるんだから顔だけでも楽しくしよう」


 そんな感じで、がんばって笑った顔で街を歩いていたら、


「やあ!」


 みたいに片手を上げて、二十代から三十代ぐらいの女性が私の前にぴょこんと飛び出てきて、


「一人?」


 って聞いたきた。


 その人がたまたま知人に似ていたもので、その人かなと、


「あ、一人です」


 みたいに返事をしたと思います。


 そうしたら、


「時間あるならちょっとお茶でも飲まない?」


 と、本当ににこにこ顔で懐かしそうに言ってくれたんですが、その知人とはそこまで親しい間柄でもなかったので、


「あのう、知ってる人ですか?」


 と、今思えばえらくとぼけた聞き方で聞いたら、


「ううん、初めての人」


 と、あちらもやっぱりとんちきなことを答えるので、


「結構です」


 と、おことわりしました。


 どうやらキャッチセールスの人だったらしいんですが、多分、私が見た目だけはごきげんそうで、付け入る隙があると思って声をかけてきたんでしょうね。


 それからは心に正直にムッとした顔で歩いてたら誰にも声をかけられませんでした。

 気をつけないと、笑顔はそういう人まで幸せにしてしまう効果もあるようです。


 笑いは心にも体にもいいけれど、時と場所を考えましょう、というお話でした。

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