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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2022年  6月
51/1001

クマの魅力

 車で走っていたら、信号で停まった脇道に、


「こぐま幼稚園(仮名)」


 みたいな子供用施設が見えました。


 壁にかわいらしいクマさんの絵、それを見て、ふと、以前からちょこちょこ思い出していることをまた思い出しました。


「実物の熊は猛獣で危険なのに、なんでクマさんキャラってこんなに多いんだろう?」


 春になるとあっちこっちで、


「クマに出会ってケガをした」

「人里にクマが下りてきた」


 みたいなニュースを目にするようになります。


 中には不幸な結果を招くこともあり、山に入る時の注意事項とか、もしも人里で見かけたらこうしようとかの話題があっちこっちで取り上げられ、


「熊=危険」


 そういう意識がこれだけあるのに、そんなこと感じさせないぐらい「クマさん」のキャラって本当に多い。


 世界的に有名な著作権にうるさい会社のチョッキ着たクマさん、黄色い小鳥と組で出るのんびりしたクマさん、それになんといってもぬいぐるみでは、みんな一度は手にしたのじゃないかと思うほど「テディベア」ってクマのぬいぐるみはスタンダードです。某大型倉庫スーパーでも人より大きいクマさんが人気だったりもしますしね。


 ずっと前に読んだマンガで、小さな男の子が「クマさんに会える」と楽しみにして動物園に行き、実物を見てびっくりして大泣きするシーンがありましたが、さもありなんと思います。


 犬や猫のキャラやぬいぐるみとかも多いけど、彼らは実際に生活の中で家族であったりすることも多いです。だけどクマさんはないですよね。私は鳥好きですが、鳥にも種類が多くてかわいいキャラは猛禽類じゃなく、やっぱり「かわいい小鳥」な気がします。


 それなのにクマだけは、リアルとあれほど違ってもキャラが量産される意味が分からない。

 

 パンダはクマの親戚で、白黒模様と「笹しか食べない草食動物」のイメージがありますが、笹がなかったら人里に来て家畜のヤギとか食べてしまうこともあるそうで、元々は肉食だった危険な生き物なんだなと思ったりもします。


 他の猛獣も「ライオンちゃん」とか言われることもありますが、ここまで種類は多くないでしょう。キャラとしても「ジャングル大帝」と「ライオンキング」以外にあったかな? 定番のぬいぐるみとしては浮かばない。


 ただ、実物がどれだけ危険だとしても、やっぱりキャラとして見るとかわいいのも事実です。

 先日まで「ゴールデンカムイ」でパンチ一発で人の顔を持ってってしまうほどのクマを見ていたもので、怖い動物だと思っていても、幼稚園の壁の絵を見てやっぱり「かわいいな」と思ってしまいました。


 どう考えても不思議ですが、そこがもしかすると熊の、いや、クマさんの魅力なのかも知れません。

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