1000の異名を持つ花
今日は秋分の日、「彼岸の中日」です。
子供の頃からずっと、
「お盆は仏さんが帰ってくる日だが、春と秋にある彼岸ってなんなの?」
と、思っていました。
今は調べたので、
「昼と夜の長さが同じになるこの日が彼岸、つまりあの世に一番近い」
という理由で大事にしているのだ、ということは知ってます。その程度ですが。
それで、秋の彼岸のこの頃になるとよく見かける花を、私は実はちょっと苦手だったりしました。
その名の通り、
「ヒガンバナ」
がちょっとだけ怖いんです。
なんでかなと考えたら理由はいくつかありました。
まず、怖い漫画やドラマとかで、村外れのお地蔵様やお墓の横に地面からひゅっと生えてるヒガンバナって絵面、見たことないですか? なんとなくそういう印象があって、子供の頃に見た何かで怖い印象があるんだと思います。
次はその名前です。
「彼岸花」
漢字で書くともろに「彼岸」、つまりあの世と関係ある花って名前がちょっと怖い。
それから別名の、
「曼珠沙華」
これもなんとなく字面が仏っぽくって怖い。子供の頃にそうした印象がいくつも重なったのが怖いと思った最初なんじゃないかと推測します。
その後知ったこと。
「ヒガンバナには毒がある」
ええっ、そうなの!
そうなんです。花にも葉っぱにも根っこに毒があります。特に根っこは毒が強いらしい。そのため、ネズミやモグラが穴を掘って土手に穴を開けないためとかで、そういう場所に多く植えられました。だから余計にさびしい印象があったんでしょうね。
それから、その生え方です。地面から葉っぱもなくてしゅっと茎が伸びて、その上にあの赤い色でうねうねした花がくるっと巻きながら咲いてる。この形もなんとなく怖かった。
ということで、色々重なって、今も畑の隅っこにひょろっと生えてるのを見ると、なんとなくビクッとします。
生え方にもよるんですよね、たくさん花畑みたいに咲いてるとそんなに怖くないです。やっぱりお地蔵さんやお墓、それから人が通らない土手なんかにさびしそうに咲いてる印象が怖いんだろうなあ。今は白いのが群生して観光にしている場所もあって、そういうのはきれいだなという印象です。まあ、あれが全部毒と考えたらやっぱり怖いけど。
それで、私が知ってるのは「ヒガンバナ」と「曼珠沙華」の2つだけだったのに、今朝、テレビでえらいことを言ってるのを聞いてしまいました。
「ヒガンバナ、別名が1000ぐらいあります」
なん、だっ、てえええええええええ!
いや、100ならともかく1000!
どうなってるのこの花!
とりあえず調べてみたら、たしかにあるある、いっぱいある。
いくつかちょっと並べてみますね。
「死人花」
「幽霊花」
「地獄花」
「毒花」
「痺れ花」
……………………
やっぱりみんな怖いと思ってたんじゃん(ぼそっ)
でも他にも違う名前がまだあります。だって1000だもの。
「天蓋花」
「雷花」
「狐の松明」
「狐花」
などなど。形からそういう風に呼ばれることもあるそうです。
その中で私が一番びっくりしたのがこれでした。
「リコリス」
ええっ、リコリスってヒガンバナなの!?
リコリスだったらハーブとしてなんとなく知ってます。体にいい感じがする。
それから、以前私が書いた、
「タマスダレ」
なんですが、あの子、実はヒガンバナの仲間です。なんだってえ!
なのでタマスダレにも多少の毒があり、食べたらだめですよって書いてありました。いや、食べないけどな!
言われて見れば咲き方が似てる。でも花の形がタマスダレは可憐でかわいらしいのに、花がくねくねしてるだけで、なんとなく怖いなって思ってしまうもんなんですねえ。あ、大きさもかなり違うから、それもあるかも。
何にしても、リコリスであり、タマスダレと親戚だと分かったことで、ちょっとだけ怖さは薄れた気がします。
もっとも、夕方の薄暗い中で鎮守の森の入り口や、お地蔵様の隣に生えてるのを見たら、やっぱり横溝正史っぽい怖さで心がブルっとするとは思いますが。




