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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2021年 10月
32/1001

田んぼ見学

 「究極の案山子」を書いていて、ふと、思い出したことがありました。ついでに続けて書いてしまいましょう。


 今の土地には私が高校に入る年に引っ越してきました。ちょうど中学を卒業する年だったので、私はおかげで転校というものを経験せずに済んでいます。年子の妹は一度転校ということになりますが。


 その中学3年、妹が中学2年の時、どうしてだったか父親が、


「本物の田んぼを見せてやろう」


 と言い出して、車で神戸市北区の田んぼがたくさんあるあたりに連れて行ってくれたことがあります。

 

 うちはその当時、神戸市須磨区、同じ神戸市なのにちょっと車で走っただけでこんなところがあるのかと、妹と二人、初めて見る田んぼにちょっとばかり興奮したのを覚えています。


 そして年が明けた4月、学校の新年度を待つようにして当地に引っ越してきました。

 驚いたのが田んぼと畑です。

 うちの周囲、すぐのところに田んぼもあって、結果としてそのすぐ横を通って高校まで行くことになりました。


「あの時の感動はなんだったんだろう」


 そう思いながら、毎朝田んぼの横を最初のうちは歩いて、後に自転車になりましたが登下校していたので、その時に屈んでひょいっと覗き込み、「カブトエビ」がいるのを見たりしながら行き来していました。


 田んぼがあるのでうちの前の県道をトラクターが通ります。

 それもびっくりしたなあ。

 泥だらけのトラクターがドドドドドと音と立てながら走ります。


「なんなんだここは!」

 

 そう思いました。

 

 それまでは都心部ではなく、自然が豊かな土地に住んでいると思っていたのに、いきなり里山の雰囲気の場所に引っ越したもので軽くカルチャーショック!


 そうそう、トラクターではありませんが、引っ越した翌日に高校の入学式だったもので、高校に一人で歩いていく途中、入学式を見に行くお母さんでしょうね、留め袖で自転車に乗っているのを見て腰が抜けそうになりました。本当に、前に住んでたところとそんなに遠くないところなのにと、頭の中ぐるぐるしましたっけ。


 今はそんなお母様方もみな車に乗り換え、スマートに若いママさんが小さいお子さんの保育園送り迎えになっていますが、私が高校生の頃は感動した「田んぼ見学」をひっくり返されるような「いなか」と言っていい土地でした。


 今は、私がカブトエビを見た田んぼも埋め立てられてスーパーから色々を経て産直スーパーになっています。登校途中にあった田畑も宅地や店舗、医療機関、教育機関などになり、便利だけはやたらといい土地に変わりました。


 便利にはなったけど、たまにあの頃のように座ってカブトエビを探したい、そんなことを考えながら、やはり私も車で横を通るだけの生活です。

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