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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  7月
314/1001

父の車

 今日、いつものパン屋さんに買い物に行き、買ったものを持って駐車場に戻り、車のドアを開けて荷物を乗せていたら、


「ちょっとすみません」


 と、隣に車を停めていた男性に声をかけられました。


 何かなと思ったら、


「その車、◯◯ですよね」


 って言い出されたので、ああ、あれかなと、ちょっと心当たりが浮かびました。


 私が今乗ってるのは、父のお古というか、今では形見になった車です。

 仕事用なのでライトバン型、それにもう古い。20年は乗ってる車です。


 一時期、仕事も用事も、私が知人の知人の知人から譲ってもらった前の車で済ませてしまっていたもので、ずっと車庫に入りっぱなし、あまり動かさないので何回かバッテリーが上がってしまった、という状態だったんですが、前の車が修理代がかなりかかる壊れ方をして、そうして直してもまた壊れる可能性があるということで、泣く泣く廃車にして、父の車をもらった、という経緯があります。


 というか、父が免許を返納する前から、ずっと私が運転手になっていて、私が1人で2台の面倒を見ていたもので、もしもうちの車が壊れた譲ってもらうという話になっていました。


 とまあ、経歴を話すとそういう感じで、かなり古い車なんです。

 

「今どきこんな車に乗ってる人あんまりおらんよなあ」


 とは思っていたんですが、何しろそういう車なので、もうギリギリ、乗れなくなるまで乗ると決めています。大事に乗っています。


 と、少し前に、近所にお手伝いに来ていた方にいきなり、


「その車ちょっと見せてくれる?」


 と、言われて、どうぞと言ったら、


「今、この車すごい値打ち出とうねん」


 と、聞かされました。


「いや、もう古い車ですよ」


 と言ったんですが、なんやかんやで人気が出て、値段も上がっているとか。


「もしも手放す時に車屋が3万で下取りする言うたら俺が10万でほしい」


 と言われたんですが、手放す気はないから、とお断りをしておきました。


 そうしたら、やっぱり今日の人も、


「それ、すごい人気で値打ちがあがってるんですよ。すごいきれいやけどガレージ保管ですか?」


 と聞かれたので、そうだと言ったら、


「やっぱり。僕、車が好きなんで見たら分かります。外の保管やったらボンネットのところとかもう焼けて割れたりしてるけど、それはすごいきれいで」


 と、感心されました。


 私は車がどうとか全く分からないので、とりあえずは父の形見なので駄目になるまで乗りますと言ったら、


「大事にしてくださいね」


 と、言ってくれました。


 前は、


「うちみたいに古い車、そのへんに置いといても盗まれたりしないだろう」


 と、思ってたんですが、なんかちょっと心配になってきたぞ。


 幸いにして、実家は車庫があり、マンションの方は機会式なので、簡単にどうこうってことはないでしょうし、私みたいに車のことに詳しくない人間からすると、単なる古い車にしか見えないどころか、よくこんな古いの乗ってるな、ぐらいにしか思われないでしょうけど。


「10年ぐらいまでの間は安かったんですけど、もう20年超えてからは値打ち上がってます」


 と聞かされたので、これから先、年月が経つと本当に気をつけないといけないかも。


 金額よりなにより、大事な父の形見です。

 車が走れなくなるか、私が運転ができなくなるか、そのどっちかまで相棒としてがんばりたいと思っています。

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