究極の案山子
今、町を車で走るとあっちこっちで稲穂が頭を下げています。いや、いい風景です。
今はうちからすぐのところの田んぼはすっかり減ってしまいましたが、当地に引っ越してきた時にはあっちこっち田畑だらけで非常にびっくりしたものです。それまですぐ近くにそんな場所がなかったものですから。
少し車を走らせると、あっちこっちに田んぼがあり、そこにかかしも立っています。
かかしにも色々あり、以前は田んぼの周囲ぐるりに、マネキンの首だけを並べているところもあり、そこを通りがかると非常にびっくりしたものでした。
あ、そのあたりが前に書いた「けろけろ」の現場だったりします……
色々なかかしがいるんですが、今年はなんとなくスタンダード、棒に服を着せて顔は布に何かへのへのもへじ的なものが書かれて帽子をかぶっている、そういうのをよく見かけました。
マネキンのさらし首と違ってホッとするように見ていました。
それで、ふと、思い出したかかしがあります。
「究極の案山子」
そんなタイトルでテレビで紹介されていたものです。
ある田んぼだったか畑だったかで、カラスの害で困っているお百姓さんがいました。
色んな方法を試したのですが、どうやってもカラスに見破られてしまい、従って被害が減らない。
その上で、ふと、思いついたのがそのかかしだそうです。
最初はもしかしたら普通に立てていたのか、それかカラスに引っ張られて地面に落ちたのかは分かりませんが、スタイルとしては地面の上にかかしの装束一式が広げられています。
カラスは最初は胡散臭そうに遠巻きにしてそれを見ているのですが、最初の一羽が行って引っ張ると、単に服とかが置いてあるだけなので「なんだこんなもん」とおもちゃにされます。
翌日になるとまた同じように服や帽子を並べる、カラスが遊ぶ、そんな日を続けたある日、かかしが発動します。
その日もいつものようにカラスたちが馬鹿にするようにして寄ってきて、帽子や服を引っ張り出したその途端!
「うわあああああああああ!」
いつもは引っ張られるままになっていた帽子が、服がそんな大声を出して暴れだしたのでさあ大変、カラスたちはびっくりして大慌てで逃げ出しました。
そうです、それまでは服だけを並べていたのに、今日は中身あり、そのお百姓さんが入っていて、カラスが来たら大暴れしたのでした。
生きているかかし、それが「究極の案山子」の正体です。
その後、カラスたちがどのぐらい寄ってこなくなったのかまでは分かりませんが、少なくともしばらくは来なかったようです。
人間の知恵がカラスに勝った。とても感心し、大笑いしてテレビを見たことを思い出し、かかしを見ては笑っています。




