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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  6月
237/1001

薄いカツのカツサンド

 またまた食べ物の話題で失礼いたします。

 

 今朝のテレビで紹介されていたカツサンドが、


「ものすごく分厚い」


 カツサンドだったんです。


 サンドイッチ用のパンよりも中のカツの方が分厚い。これ、噛み切れるの? と思うぐらい分厚いカツサンドだったのです。


 分厚いトンカツ、ナイフとフォークで切って食べるとか、切ってもらって出してもらうとかならおいしいなと思いますが、私はサンドイッチにするなら、薄いカツの方がおいしいなと思います。

 

 多分それは、うちの母親が作ってくれていたサンドイッチがそうだったからだと思います。おそらく母親もその薄いサンドイッチの方が好きだったんでしょう。


 薄いサンドイッチのエピソードがあります。


 ある時、私は高熱を出しました。

 普通、体調が悪くなったらおかゆとか、スープとか、そういうものしか喉を通らない、ということが多いと思うのですが、私は胃腸に来てなかったら、喫茶店のメニューにあるような食べ物しか喉を通らなくなるんです。

 たとえば、オムライスとかサンドイッチ。軽食という感じですかね。なんでやねんと思われるかも知れませんが、そうなんだから仕方がない!


 その年は、年明けにまず母親が熱を出して少しばかり寝込み、床上げした後もいつまでも咳が止まりませんでした。長引くようなら病院へ行くようにと言ってたんですが、母も2、3ヶ月に一度通っている病院があり、その時に診てもらうから、と病院へは行っていませんでした。

 当時はもう私は家を出て、1ブロックほど離れた今のマンションに住んでいたんですが、毎日仕事で実家に通っていたし、そう言いながらも普通に両親と一緒の時間を持っていました。

 

 そして母の体調が落ち着いた頃、今度は私の方が熱を出しました。インフルとかではなかったんですが、熱でやられてへたれてしまった。その時にも母が、カツサンドとハンバーグサンドを作って届けてくれて、それで熱を乗り切りました。


 その後、母は定期の病院へ行き、ちょっと異常が見つかったのですが、それからあれよあれよと容態が悪くなり、そのすぐ後にいなくなってしまいました。

 元々の熱も、長引く咳も、その影響があったようなのですが、普通だったらそれが分かって1年ぐらいはタイムリミットがあるだろうに、せっかちな母らしいものの、あっという間の出来事に、呆然としたものです。


 後で思い返せば、そんな手間のかかるサンドイッチ、作るのもしんどかったろうに、その体調で作って、わざわざ少し離れたうちまで、歩いて届けてくれたんです。季節は冬、一番寒い2月のことです。それを思うと、今でもやっぱり泣きそうになります。


 なので、これからもうちのカツサンドは薄いカツ、生姜焼き用なんかの肉で作ったカツをはさみ、ちょっとからしを効かせた母のカツサンドです。


 そういやしばらく作ってないなあ。だってめんどくさいですもん、これ。前に作ったのはいつだったか? 甥っ子の運動会に作って持って行った記憶はあるし、カツを作った残りを翌朝のパンにはさんで食べた記憶もあるけど、結構長らく作ってないな。

 

 思い出したらカツサンドの口になってきた。

 今週いっぱいは仕事で忙しいけれど、久しぶりに作ることがあったなら、飯テロがあるかも知れませんよ?

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