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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2021年  8月
20/1001

みんみん

 暑い日が続きます。


 この季節になると聞こえてきます。


 みんみんみんみん じーじーじーじー


 そう、彼らの声です。

 もう朝早くから元気に合唱しています。


 その元気、分けてほしい、などと思いながら外にある階段を上っていったら、ふと、気がつきました。


「いる……」


 10段ほどの階段の最上段、上向いてじっとしてる……


 セミです。

 種類までは分かりませんが、上向いて倒れてる。


 困るのはこの方がご健在なのか、それとももうあちらに旅立たれているのかが分からないということです。

 以前、友人がどうやって見分けるか教えてくれたんですが、いつも遭遇した時には軽くパニックでどっちか分からなくなってしまう。


 どうだったっけ、と思いつつ、荷物も持ってるし暑いし、いつまでも残り1段のところで立ってるわけにもいかんしと、そっと最上段に足を起きました、その途端、


「あばばばばばばばばばば!」


 と、声が!


 私の!!


 動いたんですよ!

 ご健在だったんですよ!

 そして飛ぼうとするんですよ!


「ひいいいいいいいいいい!」


 思わず荷物を持って固まる私。

 階段の上にいて足を乗っけた形なので近い、すごく近い!


 飛び上がってこっち来る!

 とまらないで!


 固まってたらすぐ横を通り過ぎてどこかに行ってくれました。

 助かった……


 と、このように何回も驚かされるのでとっても怖いです。


 そして、それは他の場所でも……


 車を取りに駐車場へ向かったら、点々と彼らの姿……

 私が取りに向かうコース上に点々と……


「なんでこんなに多数で倒れていらっしゃるんだ……」


 この度は幸いにもどなたも動く気配がなく、無事通り過ぎて機会式駐車場の操作盤まで辿り着けました。


 そうして車を出し、もう一度シャッターを閉じるために車を降りて操作盤に。

 そしてまた、ふと、気がつきました。


「あ、ひかれてる」


 私のではない誰かが少し離れたところでひいたのでしょう、ぺたんとなったお姿が。

 駐車場だしなあ、あんなに倒れてたら誰ぞがひいても不思議ではない状況です。

 幸い、私がひいたのではないですが、やはりなんだか虚しさを感じました。

 せめて草むらかどこかで一生を終えられたら、と思うのは人間のエゴでしょうか?


 そして、どうしても思い出せなかったので調べてみました、見分ける方法を。


 上を向いて足を閉じている場合→お亡くなりになってる可能性が高い

 上を向いて足を開いている場合→ご健在の可能性が高い。


 だそうです。

 よし、覚えた。

 覚えた、はず。


 ですが、次回遭遇した時も、やっぱりパニックになって分からなくなるんだろうなあ。

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