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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2021年  7月
17/1001

足元の水禍

 今朝、外を見るとそれはもういいお天気だったもので、「台風一過」という言葉が浮かびました。


 実際は台風ではなく、大雨もまだ完全に行ってしまったわけではなく、まだまだ警戒を続けるべき時なのは分かっているのですが、それほどいいお天気だったということです。


 あちらこちらで水による被害が出て、テレビを見てもネットを見ても思わず心が曇るような出来事が続いていますが、幸いにも当地は今のところは何も被害らしいことは出ていません。

 震災の被害こそ受けたものの、昔からあまりそのような被害がない地域であるのは運がいいことだと思っています。


 それでも、ふと、思い出す水の怖さがあります。


 まだ私が幼稚園の時ですが、水の怖さを知った出来事がありました。


 当時は団地に住んでいて、その団地の目の前に川が流れていました。


 「春の小川」みたいな岸から足を踏み入れてさらさら流れるような川ではなく、堤防の下に川が流れているもの、「天井川」と呼ばれる形の川でした。


 大人の背丈よりも深い堤防の下に細い川が流れている。ですが、はしごや階段を降りて下まで行ってしまえば、やはりメダカやヤゴなどがいて、夏は子どもたちの遊び場に、そして家庭菜園をしている方はバケツにひもをつけたもので川の水を汲んで水やりに使う、そんな感じの川でした。


 いつもはそうやってちょろちょろと流れている細い川なのですが、その年の台風で川の上流にある貯水池もいっぱいになり、堤防いっぱいに水が溢れ、うちから見える川の岸も少しずつ削れていっていました。

 当時は怖いより、なんとなく不思議な感じがしました。もしも、あそこが崩れたら、団地が崩れて落ちるのかな、と、怪獣映画でも見てるような場面は想像しましたが。


 そんな中、当時は父親が仕事で夜帰るのが遅かったからか、母と妹と3人で家にいると、母が、


「何かあったらこれであなたたちを背負って逃げる」


 と、博多帯を出し、2人を括って逃げる練習をしました。


 母はそれほど大きい人ではないし、幼稚園児とはいっても2人を背負って逃げられるとは今ではとても思えないのですが、当時はそうやって逃げてくれるんだなと思った記憶があります。


 幸いにしてそれほど川岸は崩れず、建物も全部無事でした。

 ただ、堤防いっぱいに流れた水で、3人の方が亡くなったそうです。


 家の窓からぼーっと眺めていた水に、もしかしたらその方たちが流されていたのかも、そう思うと子供心に怖かったですね。

 あれが唯一、大雨の怖い経験ですが、今この瞬間も、同じ思いの方がいらっしゃると思うと、なんとも言えない気持ちになります。

 これ以上水の被害がありませんように。

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