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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  5月
143/1001

広島

 G7広島サミットも無事終了したようです。後はそれぞれのお国に無事に帰り着きましたよ、の報告を待つばかりでしょう。


 広島は隣の隣の県なので、何回か訪ねたことがあります。一番最初は小学校3年ぐらいでしたか、転勤で叔父が広島に住んでいたので母と妹と3人で遊びに行き、その時に広島平和記念公園にも連れて行ってもらいました。

 

 それまでに近所の子が持っていた「はだしのゲン」も読んでいましたし、親から原爆のことも聞いて多少の知識はありました。テレビや新聞などでも毎年「原爆死没者慰霊碑」や「原爆ドーム」の写真も見ていましたし。


 何しろ子供の感想なので、不謹慎とか思わずに、そうだったのかとその時思ったこととかを読んでくださるとうれしいです。


 まず一番びっくりしたこと、それはあの「原爆死没者慰霊碑」が細長かったということでした。写真などで見て、輪切りの薄いセメントだとばかり思っていたんです、当時の私は。


「え、こんなに長い建物だったのか」


 見て回った順番とかは覚えていないんですが、それに一番驚いたことは覚えています。

 そしてその前で手を合わせて祈る妹と、いとこ2人と私の写真がアルバムにも残っています。


 次にやはり原爆ドームは記憶に残っていますが、正直、何度も写真や映像で見ていて話も聞いていたので、思った通りの建物だと思ったのを覚えています。


 言い換えれば、それほどインパクトがある建物だということです。普通はあのような状態になったら解体して建て直しますよね、それがあの丸い骨組みだけになった天井の部分も、まるでローマの遺跡のように色褪せたレンガも記憶の中のそれと全く一緒で、


「写真やテレビで見たまんまやなあ」


 そう思いました。


 そしてここで、おそらく私の聞き違いか覚え違いだと思うのですが、どれがそうなのかと思って探したものがありました。


「原爆ドームの入り口のところで、溶けた人間がセメントみたいに固まって今も座ってる」


 誰から聞いたのか分かりませんが、誰かからそう聞いて、その元人間であったセメントはどんなものなのかと、恐ろしく思いながらもどこにあるのかと探したんですが、ありませんでした。


 おそらく、正しいのは、


「原爆で溶けた人間の影が焼き付いている」


 だと思います。


 そしてそれを誰だったか、親だったか叔母だったか分かりませんが聞いてみたら、


「もしかしたら資料館に入れられてるのかも」


 みたいな返事があったように思います。


 ですが、叔母の、


「あそこは小さい子に見せるにはあまりにショッキングなのでやめた方がいい」


 という意見で、その時には結局資料館に入ることはありませんでした。


 私の中でそれ以来、溶けた人は実際には入っていない資料館の中で、ずっと座り続けたまま、じっと暗いケースの中にいるイメージで固定してしまっています。なんとなく原爆の犠牲者のイメージ、象徴のようになっていると言ってもいいかと思います。止まった時のまま、ずっとこちらを見ている、そんな感じです。


 今回、資料館を訪問されたVIPたちはその「溶けた人」の視線を感じたでしょうか。それとも、もう昔のこと、新しくあちこちで増え続け、座り始めた命のない視線の後ろでは、遠くて見えなかったでしょうか。


 友人に広島出身が何人かいましたので、他の場所には遊びに行ったりしてたんですが、平和記念公園にはその時しか行っていません。いつか行く機会があったら、その人に今の日本がどう見えるか聞いてみたいと思います。

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