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小椋夏己の千話一話物語  作者: 小椋夏己
2023年  5月
133/1001

P波とS波とモグラの力

 前回、緊急地震速報のことを書いていて、ふと、話題に出た、


「P波とS波」


 について、ちょっとばかり思い出したことがあり、書いてみようかなとなりました。


 私は子供の頃から地球や空、星のことが好きで、高校では地学を選択するぐらいでした。教科書の第1ページがエジプトの大地の神ゲブの上に天空の女神ヌウトが四つん這いと言いますか、覆いかぶさると言いますか、そういうスタイルでいる宇宙を表した図だったのを今でも懐かしく思い出します。


 そういうのが好きだったからというわけではありませんが、地震の初期微動、縦揺れの「P波」とその後で来る横揺れの主要動「S波」を、知識として何かで読んで知った後、地震が来ると勝手に「今の地震はどこどこからこれぐらい」と推測したりしていました。


 あの阪神淡路の時にも夢の中でどどどどどど、という地鳴りのような音を聞きながら少しずつ目が覚めていった中、どん!!!!! と激しく突き上げるP波、すぐにどっどっどっどっと、大きな横揺れのS波が来た、と考えて、


「すぐ近く、淡路島の方角が震源! かなり大きな地震、でもP波は1回やから横揺れが終わったらおさまるから おばちゃん、落ち着いて!」


 と、その時一緒にいた伯母に中継したりしていました。


 今思えば、淡路方向に直角に揺れていたからって、そちらから確実に来ていたかどうかも分かりませんが、何しろまだ半分夢の中でいきなり揺れ出して、妙にどこかが覚めたように変に冷静だったからそんなことをしたのかも。P波とS波がほぼ同時だったので「近くの地震」との判断は合ってましたが。


 とりあえず、そんなことをわあわあ言ってるうちに次第に目が覚めてきて、段々と揺れの大きさを自覚すると同時に、もしかしたらこのまま死ぬじゃないか、と怖くなってきたことも覚えています。


 そして揺れが収まった後、段々と夜が明けていくと分かってきた、真っ赤になっていた淡路の上の空。本当に火事のようなあの色をはっきりと思い出します。


 空が赤いのは太陽の光の青い波長が塵などで(さえぎ)られて赤い波長だけが届くからなので、


「淡路の上があんなに赤い、それだけの塵が舞い上がってるからということ。もしかしたら淡路は全滅したかも知れない、あの空の下でどのぐらいの人が」


 そう考えてゾッとして、ただでさえ冬の早朝、冷えた体が芯から冷えるように感じました。


 話は戻って、とにかくそんな子供だったからでしょうか、昔は地震が来ると、


「地震!」


 と、すぐに反応していたので、母に、


「この子はモグラみたいな子や」


 と言われていました。


 だったんですが、その後で住むようになったのが今も住んでいるがっしりしたマンションで、しっかりしているのでほとんど地震を感じることがありません。そのせいか、モグラの能力がすっかり衰えてしまったように思います。

 職場なので今も毎日のように実家に通ってるんですが、その時に揺れてもほとんど感じません。家の前が県道で、大きなトラックとかも通るからかも知れませんが、マンションに住んで以来、なんか鈍くなったような。


 野生の能力を文明で封じられたんでしょうか。

 もしかしたら今はなくなったかも知れないモグラの力、ちょびっとだけ戻ってきてほしいな、そんな気もします。

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