武家娘の正しい着物の着方
ネットで話題になっていた、
「着物イベントのイラストが『左前』になってる」
に、ふと、目が留まりました。
「左前」とは、普通に着物を着る時とは逆の方向、「死に装束」の時に着る着方、で分かるでしょうか。
それに対して、ポスターを作った側の方は、
「着物はもっと自由に着ていい、なのであえてこのまま、変更する予定はない」
とのことだそうです。
う~ん、それはそれで気持ちは分からないではないですが、アレンジとかって基礎がちゃんとできた上でやるものじゃないかと思います。
一見落書きのようなピカソの絵だって、きちんとしたデッサン力や基礎があっての上での個性なわけで、めちゃくちゃ描いたわけではない。商店街の落書きがアートだと主張する人もあるようですが、だったらちゃんとアートとして認められた上でこそでしょう。人の家のシャッターや壁に勝手に書きなぐるのはやっぱり落書きですよ。バンクシーぐらいになったら、それはその発表方法まで含めて価値があるんでしょうけど、まあ普通はアートと思ってはもらえません。
着物をきちんと着こなせる人があえて崩して着るという形ならその主張も通るんでしょうが、イベントが「着物をアレンジしてみようよ」という趣旨ではないとしたら、ちょっとどうかなとも思います。本当にあえてそうしたのか、間違えたのにそう言い張ってるのかは分かりませんが。
件のイラストを見ましたが、下にシャツを着ていたり、確かにアレンジしているとも主張できるかも知れませんが、大部分の方はやっぱり違和感を持つのではないかなとも思いました。
そもそもこのことで肝心のアレンジに対する評価より「間違ってるんじゃないの?」という印象の方が強くなりますし、わざとだったら普通に「右前」で描いた方がインパクトあったんじゃないのかなあ。
で、ですね、
「どっちが正しい着方か分からない」
という方に、私の覚え方を披露いたします。
時代劇とかで武家の娘が、
「父の仇!」
と胸元から「懐剣」を取り出して悪役とかに斬りかかるようなシーンがありますよね、あれがいわゆる「右前」で正しい着方をした着物です。
今でこそ左利き、サウスポーはかっこいいと言われたりしますが、ほんの少し前まではほぼ矯正されていました。そうでなくても右利きの人の方が多いですしね。なので基本の形は右利きです。
で、その右利きの武家娘が「父の仇!」と言って取り出すポーズをした時に懐剣を取り出せる方向が正しい着方です。かっこいいでしょ?
どっちだったっけって分からなくなったらやってみてください。あなたは今から武家娘です。さあ、やってみましょう。
「父の仇!」
これでもう間違うことはないはずです。