06 自己紹介
徐々に生徒が集まってくる。
でもって入ってきた生徒たちは部屋を一瞥してから
俺の方を少し見つめ、で、席に座りに行く。
はぁ...面倒くさいわぁ...。
でもそれをお首にも出さずハルくんと話す。
相手も悪い気持ちで見てる言うわけちゃうしな。
おっ、大人入ってきた。白髪の混じった
グレイヘアでツーブロックのナイスミドル。
あの人がここのクラスの先生かな?
「はい、席についてね〜。黒板に席の表は
貼ってあるのでね」
優しそうやけど、怒ったら怖そうな先生。
「はい、みんな座れましたね。
初めましての方は初めまして、
私は一年三組担任の長谷川 弘樹です。よろしく」
黒板に描かれた名前。拍手が起こる。
「それではね、入学式は三時間目なのでね。
この時間に皆お互いに自己紹介しよっか」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はーい」
「まずは出席番号一番目の青山から...」
......
ハルくんの番や。どんな挨拶すんねやろ。
「鶴崎 遥希です。
ハルキとかハルとかって呼んでください。
世田谷在住、顔知ってる人も多いんじゃないかな?
後、最近仲のいい友達ができました。
今年一年、よろしくお願いします」
おお、結構無難やな。何気にサラッと
俺やと思われる人物が出て来て恥ずかしい。
嫌じゃ無いけど。
「いいぞー。次、寺浜さん...」
......
次は俺の番やな。
「次、渡辺くん。どうぞー」
前まで歩いて行くと、なんかざわざわしてる。
全く聞こえへんねんけど。
「え、イケメンなんですけど...」
「え?女じゃねーの?」
「綺麗...」
「さっき鶴崎と一緒にいたやつだ」
「細いな」
「このクラス顔面偏差値高えな」
「渡辺 蓮です。
好きな様に呼んで欲しいです。
訳あって大阪からこっちに越してきたんやけど、
これから東京に早よ慣れよ思うてます。
体が弱いんで運動はちょっと堪忍して下さい。
一年間宜しくお願いします」
少し間が空いたけど、
次の瞬間普通に拍手してくれた。
良かった、なんかやらかしたか思うたよ。
席に戻る途中、なんか視線多いんやけど?
(関西弁!?えっ、可愛い)
(方便男子...推せる)
(くそぉ、イケメンなのに憎む気になれねぇ)
(訳あってって...何があったんだろ?)
(友達になれねぇかな)
「...ありがとう渡辺。おーし、皆言ったな?
改めてこれから一年よろしくお願いします」
「「「「「「「「「「「「「よろしくお願いします」
「よし」
楽しそうなクラスでよかったわ。
休み時間、人がようさん来たから
ハルくんに手伝ってもらってトイレに逃げた。
次の時間は、手紙や教科書が配られた。
入学式も無事終わり、学校が終わろうとしている。
まぁ、午前中だけの4時間授業やしな。
そら早よ終わるわ。
帰りの挨拶をして、いざ帰ろうとハルくんと
校舎を出たその時。
「まってまって、ちょっとまって」
「ちょっと結衣、いきなりはまずいって」
女のコに話しかけられた。
「なんや...じゃない、なんかの用ですか?」
「ん?誰?」
「寺浜さんと夏目さんやろ」
「そうだそうだ、そうだった。んで、二人は
なんの用なの?」
「や、二人が気になったんで友達になって
くんないかなーと思って話しかけたの」
俺ら二人は顔を見合わせる。
「うん、それくらいやったら全然良えと思う」
「俺も良いぜ」
「やったー!じゃあ、よろしくねー!」
「結衣のコミュ力すごくない?
なんでこんなすぐ男友達できるのよ」
「すごいでしょー」
「すごいと思うよ結衣は」
「あー、友達になったんだったら...NINEとか
交換しようぜ」
「いいじゃん!」
「俺もええん?」
「もちろんですよ」
こうしてコミュ力高い女子、寺浜結衣さんと
大人しめ女子の夏目晴美さんのアカウントを
新たにゲットした俺であった。
「そんでよ、今から蓮ち行ってゲームするつもり
だったんだけど、一緒にやるか?」
「えっ!もちろん!やるやる〜!」
「私も良いんですか?」
「もちろんやで。ただ、妹おんねんけど一緒に
遊んでも良えかな?」
「それくらい全然良いよ!寧ろ蓮君の妹さん
めっちゃ気になる!」
「ハルくんは?ご飯どうすんの?」
「いやぁ、お母さん達仕事だしなぁ〜...
またお呼ばれして良い?」
「全然良えよ。せや、寺浜さん達も食べてかへん?」
「「え?」」
「あっ、嫌やったら勿論全然良えんやけど」
「蓮、焦りすぎ。そんな事で二人も怒らないって。
そんでこいつの飯めっちゃ美味しいんだぜ!
お二人さん」
「...なら、今私たちの親も仕事だし、呼ばれちゃう?」
「私はちょっと連絡とってみる」
晴美さん携帯を出し、親御さんにかけている様だ。
「あのね、お父さん。今大丈夫?ーーそう、
よかった。それでね、新しく友達が出来て...
ーーーえ?うん、大丈夫よ。でね、
お昼ご飯誘われたんだけど、良いかな?
ーーーいや、お金は要らないんだよ。
え、やったぁ。ありがとお父さん。
じゃあ、また夜」
「どうだった晴美?」
「うん、OKだって」
「よしゃ、じゃあ蓮ち行こうぜ」
「わかった〜」
「はい」
「あ、でもゆっくりでよろしく」
「「?」」
20分後...
息を切らして苦しくなってる俺は
家の前でハルくんに支えられている。
「自己紹介でも言ってたけど...ここまででしたとは」
「うん...思ってなかったね〜...」
「いや、ハァ、大丈夫。ハァ、いつもの、ハァ、
事やし、ハァ、心配は、ハァ、要らんよ、ハァ」
「いやいや...まぁ、本人が言うなら...」
「じゃあ、はぁ、鍵開けるよ、はぁ」
がちゃり、いつも通りの音を立ててドアは開く。
「てか思ってたけど蓮君のお家っておっきいね」
「そうだね」
「ついでに言うと隣のこの家俺ん家」
「「近っ」」
「ただいま美幸〜、ふぅ」
「おかえりにぃに。ハルにぃ。...と、だれ?」
「ああ、この人たちは今日できた友達や」
「おお〜!良かったねにぃに、友達できて」
「ありがと...ってどしたんお二人さん?」
「「か...」」
「「か?」」
「「可愛い〜!」」
「あー、成る程。大いに解るよ」
「「ハルくん(にぃ)...」」
「そんな目で見るなそんな目で」
「まぁ、手ぇ洗ってくるわ」
「はーい」
四人で洗面台に向かう。
「えー、綺麗だね〜」
「綺麗にしてますよね」
「だよな、蓮は家事力高ぇんだ」
「照れるからやめてぇなハルくん」
そして手を洗って、昨日買った食材を取り出す。
「今日は何すんだ?」
「う〜ん、簡単にチャーハンとかしよかなて
思てるけど、嫌いな人おる?」
「美幸チャーハン好き!」
「私も好き〜」
「私もチャーハンは好き...です」
「俺お前作ったもんならなんでも食える気がする」
「ハルにぃそれわかる」
「だろ?」
「阿保なこと言ってんと、ゲームでもやって
待っといて」
コントローラは複数あったし、大丈夫やろ。
確か7個くらいあったはず。
いや、買いすぎやな、確実に。
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No.6 長谷川 弘樹
蓮くんの学校の教師
作者は気に入ったキャラなのだが
物語の構成上泣く泣くエピソード全部削られた
悲しき存在。
生徒どころか先生達にも慕われている古参の先生。
担当教科は体育。
最近白髪を気にしている。