03 振る舞い
頭がいたい。クラクラする。
やっと家や。
自転車を止めると、風が心地よい。
必死に息を落ち着ける。
やっとこさ落ち着いた俺はドアを開ける。
美幸に心配されるわけにはいかんでな。
「にぃに、大丈夫なん...!?」
なんでや。
「お前、汗びっしょりだぞ」
汗拭くの忘れとったかー。そっかー。
「あ?ああ...いや、大丈夫や。手ぇ洗わせてもらうで」
「お、おう」
洗面所で汗を拭いて、手を洗う。
「お、もう11時半か」
尚のことはよ調理せなな。
にんじんを軽く洗い、包丁で皮を剥く。
キャベツの皮を外側一枚だけ捨て、水洗い。
玉ねぎの茶色い部分を剥き、根と茎の所を切る。
肉はもともと切れている。
鍋に水を溜め、火にかける。
フライパンも同じ火にかけ、油を敷く。
油がうまいことまわったら、
先に刻んどいた野菜を先に放り込む。
ジャジャッとええ音立てて炒められる野菜。
沸騰したお湯にさっと麺を潜らせてほぐす。
ほぐれた所ですぐにあげ、網ボウルに待機させる。
野菜がしなってきたので、肉を加え塩胡椒を振る。
肉にも充分火が通って、麺を投入する。
ソースを絡ませ、全体に行き渡らせ炒める。
ええ感じになってきた所で、フライパンの端に
麺達を寄せて、Sサイズの卵を三つ投入。
目玉焼きを三つ作る。
深めの平皿に焼きそばをよそい、目玉焼きを乗せる。
テーブルに箸と箸置き、コップにお茶を運ぶ。
時間は12時15分。我ながら良いタイミングや。
「焼きそばできたで〜。ゲームは一旦おしまい」
「できた!?いやぁ、さっきからめっちゃ良い匂い
漂ってきてたからさ、すげえ腹減っちったよ!」
「にぃに、やきそばおいしそう!」
「おおきにな。さぁ、冷めんうちに食ってもてや。
マヨはご自分で」
「「いただきます!」」
二人が勢いよくがっつく。
「も、もうちょい落ち着きぃや...?」
ついでに言うと俺はかなりの少食で、
食べないんやなく食べとうても食べられへんのや。
「美味しいな、おい!すげえな蓮!」
「さすがにぃに。めっちゃおいしいわ」
「そりゃぁよかったわ」
ものの数分後、
「なぁ、これお代わりある?」って。
「一人分くらいやったら...」
「美幸も欲しい!」
「むっ!じゃぁジャンケンで勝負だ!」
「「最初はグー!」」
「元気やな〜...」
「「ジャンケン...ポン!」」
「よっしゃ!勝ったでにぃに!」
「負けちまったー!」
「そんなに騒がんの。そんなにあれやったら
次は多めに作ったるから、な?落ち着いて」
「おう、すまん」
そういえば自爆気味やけど次も作る流れに...!?
「おかわり!」
ま、ええか。
「いまよそうから待ってな」
スポンジに洗剤をつけ、水で泡立てる。
軽く水洗いした皿と箸、コップを擦った。
水で綺麗に泡を落としたら、
食器用タオルで優しく拭いて、
水場の隣の干し場に立てた。
「なぁなぁ、蓮ってなんでそんなに家事
上手いんだ?」
「まぁ、小さい時からやってたからやろな」
「あー、そりゃ今からは追い着けねぇなぁ」
「手伝うか?美幸は...寝てもたか」
「おう、ソファでスヤスヤ気持ち良さそうに寝てる」
「歳の離れた妹でな、可愛ゆうてしゃぁないんや」
「そらお前、お前は偉い奴なんだよ」
「ふふ...偉い奴なんか言われたん初めてやで」
「そんなら今から自覚してきゃ良いんだよ」
「ハルくんは優しいなぁ」
「ばっかお前蓮、友達なんだから当たり前だ」
「友達、友達...ええな、友達。改めて宜しくな」
「今更だ、ばかやろー。当たり前だろ」
「「あはははは」」
その日はハルくんの家で一緒に遊んだ。
夜ご飯はシチューを3人で食べた。
久しぶりの楽しい日やった。
翌日。
「ふぁぁ...ぁぁ」
二段ベッドの上段で目を覚ます。
いつも通りの七時弱。
「朝ごはん買わな...ふぁぁ」
昨日はハルくん家のキッチン借りたけど、
流石に朝から借りるわけにはいかんし、
コンビニまで自転車を漕ぐ。
「フレッシュサラダと...サンドイッチ...
スモークチキンにパック牛乳」
二人分買って、家に帰る。
ここまでの運動で、完全に目ぇ覚めたわ。
息切れるくらい。
常人なら運動言う程の運動ちゃうやろけど。
家に運び込まれた物のうちの一つ、
アイロン台みたいな高さのテーブル。
そこに二人分並べた。
寝室に向かい、美幸の肩を優しく揺する。
「朝やで美幸、起きてぇな」
「んぁ...にぃに、おはよ」
「うん、おはよう美幸」
洗面台で、
美幸の顔を人肌に温めた絞り布巾で拭く。
まだ美幸は寝ぼけ眼やからな。
朝ごはんを二人で食べる。
「食器ないとはいえ、こんなでごめんな」
「だいじょうぶやでにぃに」
ゴミをレジ袋にまとめ、紐を結んだ。
これであとはゴミ箱来た時に捨てるだけや。
歯磨きして、美幸の髪を梳かす。
「痛くないか?大丈夫?」
「うん」
美幸を着替えさせて...
俺は買い物リストを開きながら
徐に電気製品の大店のウェブサイトに入る。
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No.3 鶴崎 遥希
男性 16歳(遅生まれ) 高校入学前
蓮が越してきた家の隣に住む住人。
良いやつ。蓮の事を女の子なのか男なのか
思いあぐねている。それを聞くのは失礼だろうな...
とも思っている。
短髪、ナチュラルショート。
力は強い。