第二十七話・北海道選抜、目指すは世界へ
『魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスターは不定期更新です。
奇跡の校内選抜から三日。
全国高校生魔導騎士コロシアムの北海道選抜大会を前に、我が校も緊張に包まれていた。
本命だった魔導騎士部ではなく、突然姿を表した魔導騎士同好会が校内選抜を勝ち抜き、正式に我が校の代表として参加することになったから。
公式ルールにあまり詳しくない生徒たちは、正式ね部員が同好会に転部して参加したらいいとか、適当なことを言っているのだが、公式ルールでは『特例措置』以外では認められていない。
「……ふむ」
いつもの放課後。
北海道選抜、南北海道大会の前日。
俺はブレイザーの微調整を行なっている。
実は校内予選以降、他校の生徒たちの中にもリミッターカットを使う生徒が増え始めている。
YouTubeで、各校の魔導騎士コロシアム参加選手紹介の動画が流れているのだが、どう見てもファーストリミッターを使う生徒があちこちに見え始めている。
「秋穂波先輩、これってどういうことでしょうか?」
「そうね。恐らくだけど、あの校内選抜の日、他校の生徒が侵入してデータを回収していた可能性があるわね」
はぁ?
そんなに他校に侵入できるものなんですか?
「今考えてみますと、あの日のギャラリーには、ハンディカメラを手にした生徒があちこちに見えていました。何処かでうちの制服を手に入れて、こっそりと侵入したのかもしれませんね」
「なるほどなぁ。でも、そういうのって反則ですよね?」
「そうでもないわよ。公式戦やプロリーグでも、敵チームのデータを得るためにスパイを潜り込ませるなんて普通にありますし。ここ数年間はなかった『校内選抜』ですから」
「ええ。本来なら魔導騎士部が南北海道大会に出るはずでしたから。それが校内選抜で参加チームが変わったとなりますと、対策も一からやり直しになります」
そういうことか。
はぁ、しっかし、この短期間でよくもまあ、リミッターカットを覚えたものだよ。
それだけ注目されているんだろうから、嬉しいという反面、気合も入る。
「……あの、南北海道大会の個人戦は、また私が大将を務めるのですか?」
星野先輩が、恐る恐る秋穂波先輩に問いかけている。
前回は時間がなかったので、星野先輩に大将戦を任せておいたんだけど、今回からは奇策は通用しないだろう。
本当に強いのが大将に来ると考えて良いはず。
「星野さんには先鋒をお願いしますわ」
「そんじゃあ、俺が中堅で秋穂波先輩が大将か」
「いいえ、中堅は私が努めます。十六夜くんには大将をお願いしますわ」
「……マジ?」
思わず真顔で聞いちまった。
いや、対戦データなら秋穂波先輩の方が多いから、てっきり先輩が大将を務めると思ったんだけどさ。
「ええ。たしかに対戦データでは私のほうが上ですけれど、リミッターを使いこなせるのは貴方しかいませんから。私ではセカンドリミットは開放できません」
そこ。
何故か星野先輩はセカンドリミットが使えるし、機体のデータを回復することもできる。
団体戦の3vs3なら、三人ともリミッターカットが使えるうちがかなり有利だし、この数日間で星野先輩のセカンドリミットはゲージを一つだけ回復することも可能になった。
だけど、火力面でいうなら、明らかに俺よりも秋穂波先輩の方が上。
遠中近接、三つの距離で自在に操ることができるからなぁ。
「火力は先輩の方が上じゃね?」
「まあ、その通りですわ」
「そこは否定しないのかよ」
「事実を申し上げたまでです。ですが、サードリミット以降を使えるのは、十六夜くんだけです」
「あ〜、そこかぁ」
思わず頭を掻いてしまうよ。
サードリミットを自在に使いこなせるチームなんて、プロ・アマ合わせても片手に余る。
うちの親父達とイタリア代表、あとはスウェーデンだかのチームが使える。
あとはそれっぽいものは使えているんだけど、まだまだ未熟。
「そろそろ教えてくださらない? サードリミットの秘密を」
「あ……です」
「「あ?」」
小っ恥ずかしくて言いづらいわ。
「愛……って言えばわかります?」
「「愛?」」
「そう。愛し合うパートナー同士の魔力を合成して、新たな魔力を生み出す。これがサードリミットなんですけど」
口では簡単に説明できる。
だけど、これが実はめちゃめちゃ難しい。
魔力は本来は混ざらない。
それを混ぜるのは至難の業である。
秘密を知った他国のチームも色々と実験したらしいんだけど、二つが混ざると『マーブル』になってしまう。
つまり『重なる二色』であって、一色じゃない。
これを一色にすると、とんでもない相乗効果が発生する。
「ふぅん。それなら、この北海道選抜の最中にものにしなさい‼︎」
「……いや、無理無理、相手がいないのですよ?」
「そうね。なら、星野さん、貴方が十六夜くんの彼女になって、サードリミットを……いえ、ダメね」
「物分かりが良くて助かりますよ。そんじゃ、俺はサードリミットじゃなくセカンドリミットの特訓を始めますよ」
「私が、サードリミットの相手を務めますわ」
──ババーン‼︎
久しぶりに見たよ、その大見得。
自信満々な顔といい、その態度といい。
なんで自分ならできるって態度なんすか?
「あの、秋穂波先輩? 頭のなかは大丈夫?」
「ええ。この大会中、私が貴方の彼女を務めますわ。さぁ、サードリミットの特訓ですわよ」
「……マジかよ。それじゃあ本来のサードリミットじゃないんだが」
「それでもいいのよ。他校の知らない技、それが必要なのですから」
あ、そういう事か。
それなら擬似サードリミットでもいいのか。
「わかりました、それではこの不詳十六夜銀河、大会期間中はしっかりと秋穂波先輩の彼氏を務めさせて貰います‼︎」
「別に……その後も継続して構わないのですけどね」
「ん? 今なんか言いました?」
最後が小声で聞き取れなかったんだけど、まあ、すぐに先輩もバトルリングに向かったからいいか。
それじゃあ、特訓を始めますかって、星野先輩、なんでクスクス笑っているの?
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
初夏の日差しが眩しい。
全国高校生魔導騎士コロシアム、北海道選抜・南北海道大会の開会式が行われる。
今年も各校の代表選手が集まり、全国一位を目指して己が実力を発揮する。
今から二十年前。
北海道の小さなゴーレムメーカーが起こした技術革新により、世界中にゴーレム機関が広がり始めた。
それは小さな携帯型ゴーレム同士のバトルから始まり、いまや世界規模の大会にまで発展した。
魔導騎士。
その可能性は未だ未知数。
これから先の未来、魔導騎士はどのような進化を遂げるのだろう。
「宣誓‼︎ 我々魔導騎士操縦者は、己のすべてを賭け、正々堂々と戦い抜くことを宣言します‼︎」
──ビーッ‼︎
会場のバトルリングのスタートコールが、一斉に鳴り響く。
そして魔導騎士がリングに姿を表すと、試合開始のシグナルが点滅を始める。
──3…2…1…
『魔導騎士コロシアム、レディ・ゴー』
ゲストの全国ランキング一位のプロの掛け声で!試合は始まった。
ここから駆け上がるのは、一体誰か‼︎
それは、あまり遠くない未来に、皆さんの目で確認してください。
まだ、物語は始まったばかり。
けれど、ここでシステムは一時メンテナンスに入ります。
バージョンアップした魔導騎士の戦いを、今しばらくお待ち下さい。
──to be continue
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
ここで、この物語は一旦お休みをいただきます。
この先の北海道選抜、そして全国大会。
さらには世界大会までの構想を練り込む必要が発生したので、今暫くのお休みをいただきます。
ここまで応援していただき、ありがとうございました。
また、遠くない将来に、銀河たちは戻ってきます。
それまでは……。




