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魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター  作者: 呑兵衛和尚
第二章・ハイスクールで熱くなれ

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22/28

第二十一話・挑戦者、ゴリ‼︎

この物語は、毎週水曜日の更新です。

さあ、盛り上がってまいりました。

 魔導騎士(マーギア・ギア)同好会の設立も完了し、夕方には笹錦さんも顧問として挨拶に来てくれた。

 もっとも、笹錦さんとの約束があり、基本的に俺たちの活動には口出ししない代わりに、助言も与えられない。

 同好会の運営は、俺たち会員のみで行うことという話になっている。

 この件は、うちの校長と魔導騎士(マーギア・ギア)部の顧問である曙顧問も交えての説明になったのだが、曙顧問が必死に食い下がって来たのは、驚きである。


「あの、十六夜の所持しているバトルリングを、我々正式な部が使いたい。彼らには、我々の使っていたバトルリングを貸与するので、かまいませんね?」


 なんだぁ、このゴリラ顧問は。

 

「あ〜、銀河、それってあれか? 【バトリングシステム】の事なのか?」

「親父から預かってきた奴だよ。バトリングシステムっていうのが正式名称なのか」

「そういう事だ。それなら曙先生、無理ですね」

「何故ですか? 正式な部活だからこそ、新型機で調整を行う必要があるのですよ? 彼らは所詮は同好会ですから」

「まあ、無理な理由は幾つかありますが。バトリングシステムは、彼がテストドライバーとしてゴーレムファクトリーから貸与されているものです」

「ですから、そのテストドライバーを我が部で行うと言っているのですよ?」


 ひかねぇ。

 このゴリラ、本当に引かない。、


「それでしたら、ゴーレムファクトリーに問い合わせてはいかがでしょうか? あなたの理屈を通すとなると、全国各地の高校の正式部に貸与しなくてはなりませんよね?」

「そ、それは……」

「そうそう、この高校のバトルリングが故障中だと銀河から話を聞いています。明後日にはメンテナンス員を派遣しますので、ご不便でしょうが、それまではお待ちください」

「え、ええっと……」


 曙顧問の顔が真っ青になった。

 

「さ、先程バトルリングを確認しましたら、何処もおかしくなっていなくてですね」

「ほう。それでは、あなたは同好会の登録を断るために、嘘をついたとでもいうのですか?」

「い、いや、それは……」

「生徒たちを導く立場の貴方が、まさか、自分の名誉を守るために、邪魔になりそうな同好会を設立させないようにしたとか? もしもそうでしたら、これは重大な問題なのですよ?」


 ええっと、秋穂波先輩の話していた奴だよな?


「バトルコロシアム規約、第二十五条一項補足のニ、理由のいかんに関わらず、同好会およびそれに付随するものの設立を妨げた部員及び顧問、コーチは、その、ライセンスを一定期間停止する……だよね?」

「ほう、銀河がそのルールを知っているとはなぁ」

「ま、まあ、うちの会長に叩き込まれたから」

「そういう事です。今回の件、ゴーレムファクトリー及びツクダサーガ公式ジャッジとしては見過ごすことができませんので」

「ち、ちょっと待て、さっきから話を聞いていれば、俺は、もと日本代表の曙だぞ?」

「元……ですよね?」

「俺と勝負しろ、もしも俺が勝ったなら、この件は、俺の処分は白紙にしろ‼︎」


 あ……やっちゃった。

 曙顧問と笹錦さんが盛り上がっているので、俺は校長の横にスススッと移動する。

 そして校長の耳元で、コソッと。


「次の顧問、探した方が良いですよ?」

「そのようじゃなぁ……」


 うちの校長は、話が早くて助かりますわ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 第二体育館。

 主に魔導騎士(マーギア・ギア)部が使用している体育館であり、四基のバトルリングが設置されている。

 まあ、それ以外にも卓球部とかバスケット部、バレー部もローテーションで体育館を使っているのだけど、半分は魔導騎士(マーギア・ギア)部が占有している。

 

「さて。ここのバトルリングは故障中と先ほど聞きましたが?」


 笹錦さんと一緒にやって来ると、魔導騎士(マーギア・ギア)部がバトルリングを稼働して練習しているじゃないか。

 これには同行している秋穂波先輩や星野先輩も、呆れ返っている。


「だから手違いだったと言っただろうが。いいから勝負だ‼︎ そこの新入部員、バトルリングを貸せ‼︎」


 怒鳴りながら、無理やりバトルリングを奪い取ると、曙はマテリアルBOXから魔導騎士(マーギア・ギア)を取り出した。


「勝負……笹錦さん、パワーBOXは持ってきているの?」

「当然。ゴーレムファクトリーの社員だからね?」


──ブゥン

 右手を正面に突き出すと、空間収納(チェスト)からパワーBOXを召喚した。

 親父が作ったゴーレムファクトリー社員に送られた、リストバンド型魔導具。

 それが空間収納(チェスト)リスト。

 床に発生した魔法陣からパワーBOXが出て来るのを見て、部員たちが騒然とする。


「まさか、パワーBOXかぁ? これは傑作だな」


 高らかに笑いながら、曙は愛機『フォレストキング』をマテリアルBOXから取り出してセット。

 かたや笹錦さんは、パワーBOXからオサフネを取り出すと、バトルリングに設置。

 すぐさまIDカードを登録した。


「あ、あれって見た事ないわよ?」

「だろうなぁ。俺のブレイザーと一緒の、ロストナンバー機だからなぁ」


魔導騎士(マーギア・ギア)セット。機体コードAT10ブレイドJP0003Mドール、ギアネーム・オサフネ】


 バトルリングのモニターには、オサフネのデータが並ぶ。


「な、なんだと? AT10?」

「おい、嘘だろ? 伝説の機体って奴じゃないのか?」


 部員たちが騒然とする。

 笹錦さんのドライバーIDはJP。

 ジャッジメント及びプロナンバー。


魔導騎士(マーギア・ギア)セット。機体コードMDP00876Aドール、ギアネーム・フォレストキング】


 かたや曙顧問のコード、最後のAはアニマルタイプ。

 外見がまさにゴリラなんだよなぁ。

 しっかりとプロナンバーのPも刻印されたいるんだけど、JPよりは見栄えが劣るのは、なんでだろ?

 

「所詮は型落ち。完膚なきまで破壊してやるわ‼︎」


 うわぁ、曙顧問が悪堕ちしているわ。

 むしろ、今までがずっと猫を被っていたようで、部員たちもドン引き状態である。



「まあ、お手柔らかに。貴方には……少し、痛い目に遭ってもらった方が、よいかもしれませんのう」

「うるさい、うるさいうるさい‼︎ 勝てば良いんだ」

「これが指導者とは、面倒な性格でござるなぁ」


 あ、やっべ。

 笹錦さん、ガチ口調になってる。


「「バトル、スタート‼︎」」


 曙と笹錦の掛け声と同時に、バトルリングが輝き、巨大なジオラマを形成する。



◾️◾️◾️◾️BATTLE START ■◾️◾️◾️


──ゴゥゥゥゥゥゥ

 巨大な円形闘技場。

 その中のあちこちに、大量の武器が落ちている。

 ダガーやショートソードはもとより、ロングソードやポールウェポン、シールド、モーニングスターなど、様々な武器が散りばめられている。


「ほう? バトルウェポン・デスマッチとは」

「ルールは知っているよな? 落ちている武器は自由に使って良い。あとは、相手がギブアップするまで戦い続ける、ダメージシステムはカットしてあるからな」

「そりゃあ、このルールはよく知っているでござるよ……拙者の友人が作り出したルールシステムじゃからなあ」


──ダッ‼︎

 オサフネが腰を低く落として走り出す。

 それにあわせるかのように、フォレストキングは足元のタワーシールドを掴むと、まるでブーメランを投げるかのようにオサフネに向かって投げ飛ばした。


──グウォォォォォン

 一つ、また一つ。

 足元のシールドだけじゃなく武器まで拾い上げては、投げる。

 フォレストキングの戦法は怪力特化による投擲攻撃であり、作戦もへったくれもない。


 パワーイズジャスティス。


「どうだどうだ、近づいてこれまい‼︎」


 投げるものがなくなったら、バックステップで後ろに飛び、また武器を拾って投げつける。

 かたやオサフネは絶妙なタイミングで交わし続けながら、ゆっくりと間合いを詰める。


「たしかに、この戦法は厄介でござるなぁ……」

「そうだろ、これが、俺が日本代表になった技だ」

「貴君が日本代表になった年は……ドライバーが今ひとつだったということか?」

「それはどういう意味だ‼︎」

「この程度の腕で日本代表とは、片腹痛いでござるよ」


 オサフネの動きが変化する。

 速度が上がり、腰を落として。


──ダッ‼︎

 一気に加速し、マウンテンキングの横に向かって駆け抜ける。


──キン

 一瞬、金属音が響く。

 その直後には、オサフネはマウンテンキングの斜め後ろに立ち、ゆっくりと納刀している。


「何処に向かって走っていく?」

「もう終わりでござるからなぁ」

「なんだと? ふざけやがって‼︎」

 

 マウンテンキングが振り向く。

 腰から下だけが振り返り、上半身は動かない。

 横をすり抜ける時の一閃で、マウンテンキングは腰から真っ二つに切断されている。


──ズルッ!

 そして上半身が腰の上から落下し、やがて下半身も倒れていく。


「な、なんだ、今、何をした‼︎」

「それがわからない時点で、負けですなぁ」

「そ、そうか、貴様はずるをしたんだな? チートだろ、そうだろ?」

「バトルリングは、すべての機体の監視も兼ねておる。公式システムが反則を取らないのは、どういう意味かわかるであろうが」

「システムの裏をかいただと?」

「違うわ‼︎ 拙者程度の動きや攻撃など、魔導騎士(マーギア・ギア)の設定や調整、創意工夫でなんとでもなるわ‼︎」


 バトルリングが試合終了を告げないので、まだバトルは続いている。

 フォレストキングの上半身は、まだかろうじて動いているのだが。


──ズボァァァァッ

 オサフネが、離れた場所から刀を振る。

 その一撃が届くはずがない距離にも関わらず、フォレストキングは袈裟斬りに真っ二つになる。


──あぁぁぉぁぁぁぁ

 曙が絶叫する。

 切断面には、魔導騎士(マーギア・ギア)の心臓とも言える魔導核が見えたのである。

 そこを破壊されると、蓄積されたデータも何もかも失う。


「ぎ、ギブアップだ、俺の負けだ‼︎」


 曙が負けを認めたのと同時に、ジャッジメントシステムが起動した。


◾️◾️◾️◾️GAME OVER ■◾️◾️◾️



──ウォォォォォォォォ

 喝采が響く。

 慌ててフォレストキングの残骸を回収すると、曙顧問はマテリアルBOXに全て収めて走って出て行く。

 そして笹錦さんもオサフネをパワーBOXに収めると、空間収納(チェスト)に収納した。


「ゴーレムファクトリー公式審判として、曙顧問のコーチ資格を三年間停止します。己の私利私欲のために、システムルールを無視した行為は、ドライバーたちを導く立場であるコーチには相応しくありません」


 堂々と宣言する笹錦さん。

 いつのまにか校長も見ていたらしく、後ろで拍手している。


「そ、それじゃあ、俺たちは大会にでられないのですか?」

「公式戦登録期間内の、コーチ及び選手登録は認められています。その間にコーチを探すしかありませんが」

「あなたは、俺たちのコーチになってくれませんか?」


 部員の一人が笹錦さんに問いかけるけど、頭を振っていますよ。


「私はすでに、魔導騎士(マーギア・ギア)同好会の顧問を引き受けていますので」

「その通りですわ‼︎ 我が魔導騎士(マーギア・ギア)同好会は、北広島西高等学校魔導騎士(マーギア・ギア)部に対して、校内予選の開催を宣言しますわ‼︎」


 うわぁ、秋穂波先輩が叫んだ。

 これには部員たちも絶句し、力一杯驚いている。


『ピッ……校内予選システム起動宣言を受諾。一週間以内にチーム名簿を登録してください。魔導騎士(マーギア・ギア)部は、顧問の再登録を行わない限り不戦敗となります』


 バトルリングが、秋穂波先輩の叫びを受諾した‼︎

 これには笹錦さんも苦笑している。


「それでは、一週間後を楽しみにしていますわ」


 フヮサッと髪を靡かせながら、秋穂波先輩と星野先輩が体育館から出て行った。

 いや、その立ち位置は、悪役なんですけど……。

 俺、どうすれば良いの?


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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