メッチャ家のめっちゃ滅茶な日常
めっちゃがめっちゃ多くて、めっちゃ滅茶なメッチャ家。
これを読めばめっちゃが乱発される現状での、読者側からの辟易…………イヤな気分が理解される、かもしれない。
「ハゲル=メッチャ侯爵! ハゲル侯爵はいるか!? 貴様にめっちゃ話がある!!」
メッチャ家。
それは国一番のめっちゃ金持ちな貴族。
どんな経緯かは知らないが、とにかくめっちゃ金持ちである。
めっちゃ金持ちであるから、大概はお金でめっちゃなんとかなっている。
「そんなにめっちゃ慌てて、どうしました? 王都警備隊隊長のクロー=ニンゲン子爵殿?」
王都にあるメッチャ家の王都別邸へ飛び込んできたのは、説明の通りにめっちゃカッコいい隊長さん。
その怒鳴り声に慌てて、めっちゃバーコード頭をしてめっちゃでっぷりした体を揺らしながらやって来たのは、ハゲル=メッチャ侯爵本人。
「ハゲル侯爵、何をめっちゃトボけている? 貴様の子息であるワイル殿が、また王都で騒ぎをめっちゃ起こしているんだぞ!?」
「なに? 息子のワイルが、また何かをめっちゃしたのか?」
飛び込んできた息子の知らせに、めっちゃ驚く様子を見せないハゲル。
顔の肉で潰れてめっちゃ細く見える目も、めっちゃ見開かれてクリクリした本来の形を取り戻す程に。
それもそのはず。 ワイルが王都へ出掛けると、必ずひとつは騒ぎをめっちゃ起こすので。
なので、またか。 としかめっちゃ思われないのだ。
ちなみにワイルは、父親にめっちゃ似てないめっちゃイケメン。
めっちゃ引き締まったカラダとめっちゃ整った顔で、そのめっちゃ暴れん坊ぶりはむしろプラス要素としてめっちゃ見られて、巷でも貴族の若い女性達の間でもめっちゃキャーキャー言われている。
そんな様子から、裏社会でめっちゃ幅を効かせているんじゃないかとの噂が、めっちゃ蔓延っていたりする。
「貴様の息子は王都でめっちゃ騒ぎを起こす。 その度に我々警備隊は、めっちゃ苦労するのだよ!」
「そうですか、それはめっちゃ苦労をかけますな……」
「全くだ! 子息の責任は家の責任。 ちゃんと貴様もめっちゃ責任をとれよ?」
クローはめっちゃ言うだけ言って、めっちゃ満足そうに去っていく。
~~~~~~
去ったクローがめっちゃ戻ってこないか、めっちゃ聞き耳をたてていないか。
その辺をめっちゃ確認してから、ハゲルはため息をめっちゃ盛大に吐く。
「まったく、あの息子は。 あまり暴れるなと言い付けているのに、めっちゃ好き放題にめっちゃ暴れおって」
ため息を吐いたのは、ワイルがなぜ暴れるかをめっちゃ知っているからなのだ。
「あなた? 警備隊の隊長がなんて?」
「ああ、めっちゃ麗しき我が妻のキレー=メッチャではないか」
「あら? めっちゃイヤですわぁ。 あなた程のお歳で、私をめっちゃ誉めるなんて。 めっちゃ照れてしまいますわ」
めっちゃイヤンイヤンしてめっちゃ照れているキレーをめっちゃ放っておくとして、話は本題へめっちゃ入る。
「息子のワイルがまた王都でめっちゃ暴れたと、隊長自らがめっちゃ怒鳴り込んできた」
「あら、まあ」
さっきまでのやりとりはめっちゃ何時もの事で、それをめっちゃさらっと流して、本題を切り出すのもめっちゃ何時もの事なのだ。
そしてキレーのリアクションも、めっちゃ何時もの事。
「あの子は昔から体をめっちゃ鍛えてきたから、問題の解決法が筋肉しかない、めっちゃ単純な子なのにね?」
めっちゃズバッと切り捨てる様にキレーが言い捨てるが、これはめっちゃ事実。
「うむ。 我が息子がめっちゃ暴れる相手は、めっちゃ悪人やめっちゃチンピラ相手ばかりだと言うのにな?」
父親もめっちゃズバッと言葉でめっちゃ切り捨てる。
でも実際、めっちゃ道理の通らない物事をめっちゃ正すには、力しか無いのをこの両親がめっちゃ見せて育ててきた結果だ。
だから「力の無き正義は正義にめっちゃ在らず」を地で行く、ワイルドな乱暴息子へとめっちゃ成長したのだ。
なので、その暴れた後処理にメッチャ家はめっちゃお金をばら蒔いて、大概の事をめっちゃ解決している。
「しかしあの隊長に自覚はめっちゃ無いのか?」
「自覚……ですか?」
吐き出す愚痴を吐き出してめっちゃ落ち着いたふたりの会話は、もうひとつの懸念事項へめっちゃ向かう。
「息子がめっちゃ暴れる意味はひとつしか無い。 それなのに、王都でめっちゃ暴れ続けているのは、どんな意味があるとめっちゃ思うかな? キレーよ」
そうめっちゃ問われれば、キレーはそのめっちゃ美貌の顔立ちをめっちゃ歪めて、物思いにめっちゃ耽る。
「ワイルはめっちゃ悪い相手にしか、めっちゃ暴れない…………王都には警備隊がめっちゃいる…………でもめっちゃ暴れ続ける息子がいる……ああ」
めっちゃ歪んだ顔が、めっちゃキレーに戻る。
めっちゃ戻ったとはつまり、キレーさんがめっちゃ綺麗で、誰がめっちゃ見てもめっちゃウットリする顔だと分かる。
なんでこんなめっちゃ綺麗な人が、あんなめっちゃでっぷりしたバーコード頭と結婚したのだろうか?
めっちゃ信じられるか? 今でもめっちゃ熱々の様子からめっちゃ分かってるかもしれないけど、あれでも貴族がいる世にはめっちゃ珍しい、恋愛結婚なんだぜ?
そう。 ハゲル=メッチャはめっちゃうらやましい御仁なのだ。
……じゃない。
話をめっちゃ戻そう。
「あの隊長さん、国王陛下のお膝元であるこの王都の治安を、守る気がめっちゃ無いのね?」
「めっちゃ正解。 お陰でこうしてメッチャ家がお金を方々へめっちゃ出して、出来るだけ丸く収める役回りって訳だな」
「めっちゃ貧乏クジね」
「まぁそのめっちゃ詫び代わりとして、国から王都の騒ぎを終わらせた報奨金で、使った金額以上をめっちゃもらってるがな」
これはめっちゃ事実。
あのイケメン隊長は口がめっちゃ上手く、上司にサボりぐせをめっちゃ言及されても、めっちゃ言い逃れている。
だが、警備隊がめっちゃ仕事しない=王都では問題がめっちゃ起こっていない=王都で事件はゼロ=めっちゃ平和。
この論法でめっちゃ仕事をしているとか、成果をめっちゃ見せる。
でも実際には、事件がめっちゃ起きる。
めっちゃ起きた事件を、ワイルがめっちゃ解決する。
しかしワイルはめっちゃ脳筋。
めっちゃ力のままめっちゃ暴れれば、周りへめっちゃとばっちりが行く。
その尻拭いをメッチャ家がしているのに、世間ではメッチャ家がめっちゃ悪く言われていて、その事情をめっちゃ知っている王からの慰謝料と言う意味での補てんもめっちゃ含まれている。
「それと、クローのサボりっぷりにめっちゃ業を煮やした陛下から、ついに動き出すからってお言葉もめっちゃ頂いた」
「あら、ワイルもこれでめっちゃ暴れなくなるのかしら?
それとウチのお金の収入源は、主にこれなのかしら?」
キレーはめっちゃ知っている。
領地経営で大部分のお金がめっちゃ使われていると。
なので家の生活費はめっちゃ切り詰められていると。
しかしそれで、この侯爵家に不満を持つものはめっちゃ少ない。
キレーも貴族やその御用商人達や関係者の間だけで多くののお金がめっちゃグルグルと、めっちゃ回っている状況はめっちゃ望んでいないのだ。
なので、自分達だけで送るめっちゃ贅沢な暮らしなどめっちゃ望んでいないのだ。
…………キレー侯爵夫人は、心までめっちゃキレーである。
「いやいや、こんなのはめっちゃ一部だ。 一番はもちろん、めっちゃ栄えるようにめっちゃ力を入れて領地経営している税収だよ」
「うふふ。 あなたのその外見、本当にめっちゃ損しているわよね?」
「はっはっは。 これはこれでめっちゃ良いぞ? めっちゃ寄ってくる態度で善人か悪人か、めっちゃ丸分かりだからな」
「あらあら。 めっちゃ痛し痒しねぇ」
「キミと出会うめっちゃ前は、白皙の美男子だったんだぞ?」
「あなたとめっちゃ初めて顔をあわせたのは……8歳頃だったわね」
「はっはっはっはっは!!」
ハゲルが全身でめっちゃ笑うと、めっちゃ蓄えた全身のお肉がバルンバルンとめっちゃ揺れる。
そのめっちゃプリティーな姿をめっちゃ見てキレーは頬をめっちゃ緩めるが、めっちゃ緩んだ口からはめっちゃ厳しめな言葉が飛び出た。
「少しは痩せてくれてもめっちゃ良いのよ?」
「……やっぱり、こんな体はめっちゃイヤかな?」
「いえ、その笑うとめっちゃ揺れるめっちゃ可愛いお腹もめっちゃ良いのよ? でも、めっちゃ太っていると病にめっちゃかかりやすいってめっちゃ聞くの」
キレーからのめっちゃ気遣わしげな視線をめっちゃ受け、ハゲルがより一層小刻みにめっちゃ震える。
「体の心配をめっちゃしてくれる妻に、めっちゃ感動する……!!」
「あなたっ……!!」
「キレー!!」
メッチャ家はめっちゃこんな日々である。
ちなみにこのめっちゃ滅茶な寸劇はメッチャ家がタウンハウスにいる間、屋敷の玄関でほぼ毎日めっちゃ開演されているのである。
つまり、家の使用人達からめっちゃ見られている。
家主がそこにいる以上、めっちゃ黙って控えている家人もめっちゃいたりする。
が、やはりめっちゃ何時ものことなので、使用人達はめっちゃ慣れたもの。
『めっちゃはやく終わらねえかな、この茶番』
この言葉が、今日も屋敷にめっちゃ渦巻いている。
ワイル=メッチャは、メッチャ悪い奴だと思った?
残念! めっちゃワイルドのワイルでした!!
ワイル殿 と言わせるために、悪いと誤認させるために、仕組んだ罠だったのだ!
それとは別に、めっちゃのゲシュタルト崩壊だぜ!
自分が色んな作者さんの作品を拝読する度に、ちょっとアレな国語力を知ってしまって色々とモヤモヤするんだぜ!
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蛇足
メッチャ家
基本的に善人揃い。
家人……仕えている使用人も例外は無い。
いつの世代も、深く関わる人にやたらと恵まれる不思議で奇跡な一族。
ハゲル=メッチャ
方々へ心を砕き続けているので、ストレスがマッハ。
お陰で髪も抜けるし、食事の量がめっちゃ増えるし。
なので贅沢してるから太っている訳ではない。
8歳の頃には太ってたんだろ? その頃は親や使用人たちに甘やかされて太りました。
キレー=メッチャ
めっちゃ綺麗なご夫人。
外見ではなく、中身……心を大切にするお人。
ワイル=メッチャ
若干任侠者気質があり、口より先に手が出る。
だが心の根っこは、両親に負けず劣らず善人。
と言うより、両親の人の良さを見習おうとして、やや暴走している。
アニスキー=メッチャ
本文では未登場の、第二子で次男。
事務が苦手だと公言する兄に代わり、文官方面を取り仕切る出来た弟。
登場しなかったのは、メッチャ領の代官をするために所領で居残りしてるから。
アニスキーはアニスと女性っぽい響きから妹とする考えもあったけど、それだと薄い本にしかならない為ボツ。
もちろんBL展開だって望めない、健全で真っ当な方面での兄好き。
リョーチデージ=メッチャ
未登場の妹。 第三子で長女。
領地が大事な娘さん。
本当は名前がカゾクスキーになりかけていたが、アニスキーと似すぎている為に無理矢理名前を変えられた。
領地が大事だが、メッチャ領はメッチャ家が居てこそなので、家族も(むしろ家族がいつも笑顔かつ元気でいる事こそ)デージ。
もちろん婚約者は、領内の誰かを熱望しているとか。
クロー=ニンゲン
名前から、こいつこそが苦労人だと誤導するための罠。
正確にはこんな奴に振り回される周りの人間こそ苦労する。
いや、させる。
噂では王都内で悪さする、悪い所から賄賂をもらっているために仕事をしていない……らしい。
本文に有る通り、そろそろ罰が下る頃。
メッチャ侯爵領
どこまで神に祝福されているのか、とにかく善人が多い。
もちろん例外もあるが、基本善人。
とても分かりにくい天の邪鬼みたいな奴もいるが、良く良く話し合ってみると善人だと分かる事もザラ。
メッチャ侯爵領内 裏ギルド
実は有る。 例外がこれ。 内情は任侠集団。
主な活動は領内の衛兵なんかが入れない場所の支配。 もはやあぶれもの達を引き受ける施設。
それと、そこそこに領民へ悪事を働くこと。 実質善人ばかりの地で油断しないよう施す、ワクチン状態。
被害は侯爵家が補てん。
時おり法で裁けない悪人を裁く、仕事人的な仕事をハゲル侯爵から依頼されることもある。
なかば侯爵家の下部組織だが、違うと本気で反発される。
~~~~~~
今回の登場人物は3人だったのでアレですが、人数が増えれば「めっちゃ」使いもめっちゃ増殖。
その想像をしてみると、自分は自然と萎れます。
最近の作家さんはキャラクターの言葉遣いに、動きに頓着しない人が多すぎる。
判で押したような、記号チックなキャラ“ばかり”を多く見かける。
これが本当に悲しい。
ほら、アレだ。
登場人物の全員がネットスラングしか喋らない作品とか読みたい?
自分ならちょ~っと遠慮したい。
些細な違いで、結構キャラ立ちするのに……。
流石に何十人も書き分けるのは難しいけど、しゃべるクセ(語尾だけじゃないからね?)ひとつで案外変わるものです。
動きのクセひとつでも、結構変わる。
口癖として、最近どこでも聞く○“い”。
“凄く”や“広く”などのくがみんなの頭からすっぽりと抜け落ちて、とても悲しく感じる自分もいるけどそこを逆利用。
○くって書いた方が文章を読み上げるうえで音程が綺麗になる部分、綺麗な会話となる部分で「凄い……く感じるだろ?」とかって、くをついつい忘れて訂正しようとするキャラとか。
むしろ「凄い、無い」「広い、無い」とかって、凄くない広くないすら言えないなんて、カタコトかっ!? ってほど日本語に不自由する純日本人ってのも面白そう。
首痛めた系男子として、やたらと首の後ろを撫でながらしゃべるキャラとか。
しゃべりだしで「ん~……」と必ずと言って良いほど唸り、しゃべる前にもう一度考えをまとめ直してからしゃべるキャラとか。
しっかりしゃべるのに、なんかいつも何処を見ているのか分からない、いつも上の空なキャラとか。
真面目だったりクサいセリフはキャラじゃないと公言していて、そんな場面に居合わせたり言わねばならん時には、口許がヒクヒクとひきつるキャラとか。
そもそも“めっちゃ”しか強調する言葉を使わないのが異常。
他にもあるでしょ?
凄く・とても・激しく・どこまでも・笑えるほど・○○!圧倒的○○……!!・ビックリするほど・何度見返しても・極めて・驚くべき・思わず立ち止まる位に・とてつもなく・“長い長い”坂道みたく、連続使用
少し悩むだけで、この程度は出てきますね。
どうですか? めっちゃ以外に目を向けてみませんか?
プロ作家様の群像劇作品を読んで研究してみるのも、良いもんですぜ。
結論、なんか説教臭くてすみません。