元狩人の男
一方、その頃、薬を探しにいく彼は
焚き火の中で考えにふけっていた。
なぜ、彼が薬を作るのか、
それは愛しき我が子を救うため、
彼は昔、狩人として、
様々な地方をまわった。
お供として、人語を話す不思議な猫をつれ、
時には他の狩人達と
大型モンスターを狩ったりして、
狩れたときは笑いあったり、
失敗したときは共に泣いたりしあった、
今はどうしているのかと、過去の中の栄光を思いやろうとしたが、今はその時ではない。
今は一人の男、一家を背負う大黒柱として、生きている。
娘が一人、妻一人そして、彼の三人家族である。
酪農を営んでいる。
加えて、お供だった猫は彼らの手伝いをしている。
牛の世話を猫に任せて、
男はこの地方で取れる薬草を取りに向かった次第である。
ただし、ただの薬草ではない、その病に聞く薬草は、
この地の奥地に潜むモンスターが好んでいる
とされるものらしい。
そのモンスターを倒せたものはいない。
実際に死人が出ていて、
束になってかかっても全滅することもある。
それを一人で挑むのは、無謀といって止めるものがいた。
例えば、彼の妻、彼と旅を共にした猫、村人、などだ。
しかし、愛しき娘が治るためにはその薬草をとらなければ、
死んでしまう。
彼自信の命、欲しさに諦めるのも悪くはない、
しかし、なにもせず、ただ泣いて、死を送るのは
突っ立ってるのと同じだと。
雇うお金も充分にない、
なら、自分の力量でなんとかするしかないと考え、今に至る。
彼は洞窟の洞穴を拠点として暮らしている。
残された時間はあまりない、
急がねば……
しかし、この吹雪の中、向かうのは危険だった。
だから、今は焚き火の燃え盛る炎を見るしかなかった。
吹雪が止んだら、男はその場所に向かおうと決めていた。
薬を作成し、磨石の準備、満タンである。
早く、向かいたい。
倒すのが目的ではない、倒せば死ぬ、だから、バレないように、採集ができればいい、
だが、あのモンスターは好物としているものにたいして、目印をつけているらしい、その目印が消えると、空に花火のようなものがうち上がるというのだ。
だから、結局は戦わなければならなくなる。
逃げるのも得策だが、
いかんせん、あのモンスターは足が早く、
後ろを向ければ、格好の餌食となる。
だから、簡単ではなく、負ければ死……
なぜ、彼が大剣を持って、ここに来たのか、
二つの選択があった。
安定な選択というものが、
残された時間を娘と共にクリスマスを祝うことさえ
できたはずなのに……
彼の目は険しくなる。
ここで死ねば終わる。
いや、死んでたまるか!
というように、
彼の拳はいっそう強くなる。
吹雪の中、何も見えない真っ白な景色が、
彼の気持ちと重なりあった。