三属性目
あれから何度かウォーウルフと遭遇したが、一度目の戦闘の教訓を生かして毛皮に傷をつけないように倒している。
おれとフェミリアは一撃必殺を心がけて、ユースケはポイントを消費して、新たに習得した土の中級魔術でおれ達をアシストしていた。
「土束縛!」
ユースケの魔術により、ウォーウルフが土の鎖で固定される。
「動けないなら、余裕」
身動きが取れないウォーウルフの胸を、フェミリアが横から短剣で突き刺す。
「やりー! これで何匹目だ?」
「さぁな、数えていない」
二階層の探索は順調に進んでいた。
罠も何度かあったが、フェミリアが事前に察知し、回避している。
それにしてもウォーウルフが多い。
もう三十匹は倒しているんじゃないだろうか。
そろそろ疲れてきたし、休憩するか。
そう思っていた矢先、転移魔法陣を発見した。
「やっと見つけたか……」
「これで三階層に行けるな!」
「待て、ユースケ。迷宮に入ってからだいぶ時間が経っている。外はもう夕暮れ時だろう。食料の準備もしてないし、ここは地上へ戻るべきだ」
「アルに賛成」
今日は元々様子見のつもりだったしな。
二階層を突破出来ただけでも上出来だろう。
「でもよ、ここで三階層に行かないと、また二階層からやり直しだろ?」
「いや、転移魔法陣は次の階層の扱いになるらしい。つまり、この転移魔法陣で帰還したら、次は三階層へ飛ぶ事が出来るというわけだ」
「そうなのか?」
「あぁ。でないと地上から一階層へ飛べないだろ?」
「確かにそうだな」
理屈は分からないが、迷宮の転移魔法陣とはそういうものらしい。
「納得したなら今日は帰るぞ。いいか? よし、地上へ!」
転移の光に包まれ、おれ達は地上へ戻ってきた。
外は夕焼けに染まっている。
「どうやら入り口とは違う場所のようだな」
戻ってきた場所は、迷宮に入る時に使用した転移魔法陣がある場所ではない。
少し歩いてみると、その転移魔法陣から壁を挟んで裏側にある場所だと分かった。
行きと帰りが同じ場所だったら、大変な混雑になるし、違う場所に転移するのは当然か。
迷宮が混雑とか考えていると思うと少しおかしいが。
それにしても、入り口は列が出来るように壁と門が設置され、帰りはなにも無しか。
おそらくあの壁や門は、この街の領主が命じて造らせたのだろう。
税を取りやすいようにな。
まったく、よく考えたものだ。
「アル、明日は三階層からスタートするのか?」
ユースケが唐突に尋ねてきた。
「まぁ、これからギルドへ行って、ウォーウルフの素材がいくらで売れるかによるが、明日は三階層から始めようと思っている。なんでだ?」
ウォーウルフの素材が余程高く売れたら二階層へ行くつもりだ。
まぁ、まずないと思うが。
「いやぁ、なんつーか、アシストもいいけど、おれとしてはやっぱり、バンバン攻撃魔術撃ちたいんだよね!」
どうせそんな事だろうと思ったよ。
おれはユースケの話を聞き流して、ギルドへ向かった。




