斥候
フェミリアに斥候を頼んでから、幾分経った。
あれから何度か戦闘が発生しているが、そのどれもがゴブリンだった。
余りにゴブリンの死体ばかり出来ていくので、もったいなく感じたおれは、自作のアイテムバッグに倒したゴブリンを収納する事にした。
あとで休憩時間にでも、おれが使役する小悪魔のルシウス、アンモイ、サモニアを召喚して、ゴブリンの死体を食わせようと思っている。
悪魔は血肉を貪ると成長するからな。
「止まって」
そんな事を考えていると、前方を進んでいたフェミリアが立ち止まった。
なにかあったらしい。
「そこ、罠がある。たぶん落とし穴」
フェミリアは三メートル程先を指差しながら、そう言った。
「試してみるか」
おれはアイテムバッグからゴブリンの死体を取り出し、フェミリアが指差す先へ投げてみた。
すると、ゴブリンの死体が落下した場所を中心に、地面が抜け落ちていった。
フェミリアの言う通り、落とし穴の罠だ。
穴の中を覗いてみる。
深さは三メートルくらいありそうだ。
頑張れば出れない事はなさそうだが、苦労するだろう。
「すげー! ほんとにあったよ! フェミリアお手柄じゃん!」
「フェミリアはすごい。ユースケより役に立つ」
「そりゃないぜフェミリア……」
ユースケがフェミリアを褒めるも、逆にからかわれている。
これじゃどっちが奴隷でどっちが主人か分からんな。
まぁ、それこそがユースケが望む関係なのだろう。
たぶん。
「フェミリア、良くやった。この調子で頼む。先へ進もう」
その後は特に罠もなく、何度かゴブリンを斬殺しただけで、順調に進んだ。
順調といっても分かれ道は適当に選んでいるので、本当に順調なのかは分からないが。
一応手書きで簡単な地図を作製してはいるが。
迷宮に入ってから四時間程経っただろうか。
おれ達は、ついに二階層への転移魔法陣を見つけた。
これに乗って"二階層へ"と唱えれば、二階層へ転移するはずだ。
逆に"地上へ"と言えば、地上へ戻ることが出来る。
「やっと見つけたな」
「あぁ、疲れたぜ」
「ユースケは貧弱。フェミリアはまだ平気」
おれも体力的には疲れていないが、四時間も歩きどおしだった事だし、一度休憩を挟んだ方がいいだろう。
「二人とも、一度ここで休憩を取ろうと思う。見張りは使い魔を召喚するから任せてくれ」
おれは悪魔を三体共召喚し、一体に見張りを、残りの二体はゴブリンの死体を食うように命じた。
もちろん交代で見張りをするようにも言った。
ここまで結構な数のゴブリンを倒してきた。
悪魔たちがその血肉を貪って、少しでも強くなればいいのだが。
おれはそう願いながら、アイテムバッグからゴブリンの死体を出していった。




