一階層
一瞬浮遊するような感覚があり、転移の光が消え、視界が戻るとそこは洞窟のような場所だった。
「ここが迷宮か……」
「やっぱり一階層は洞窟型か。テンプレだな!」
「じめじめする」
天井に生い茂る、光り輝く苔のようなもので光源が確保されている。
これが迷宮か。
おれ達は思いにふけるように、しばらく転移した場所に留まっていた。
後続の冒険者が来ない事を考えると、転移する場所は一か所ではないのだろうか?
「さて、そろそろ行くか」
「そうだな」
おれ達は進みだした。
先頭がおれ、真ん中がユースケ、後ろがフェミリアだ。
しばらく行くと、曲がり角の先からなにやら声が聞こえた。
「なにかいるぞ」
おれは、慎重に壁から顔を覗かせた。
すると、そこにいたのは三匹のゴブリンだった。
「ゴブリンだった。三匹だ。行くぞ!」
ユースケ達に声をかけ、おれはゴブリンに突っ込む。
やはりというか、なんというか、戦闘は呆気なく終わった。
ユースケ達が出るまでもない。
おれ一人で三匹のゴブリンの首を撥ねていた。
「まぁ、一階層はこんなものか……」
今更ゴブリンの素材なんて、小遣いにもならないので、ここは死体を放置しておく。
迷宮は時間が立つと死体などが床に吸収されると聞くので、じっくり観察したい気もするが、それではユースケ達が暇してしまうだろうから、また今度の機会に取っておく。
そのうち時間が取れたら一人で訪れてみよう。
「次の敵もゴブリンだったら、フェミリアが相手してくれ。戦闘力を見たい」
「分かった」
しばらく進むと先の方に小柄な影が見える。
またゴブリンのようだ。
今度は二匹いる。
「フェミリア、ゴブリン二匹だ。やってみろ」
「了解」
そう言うと、フェミリアは獣人特有の素早さで駆け出し、背後から一匹のゴブリンの喉笛を掻っ切る。
もう一匹がやっとフェミリアに気付き、掴みかかろうとするが、フェミリアは上手くそれを躱し、すれ違いざまに胸に短剣を突き刺す。
それでゴブリンは絶命した。
「お疲れさん」
「すげーじゃんフェミリア!」
おれとユースケがフェミリアを労う。
フェミリアは嬉しそうに頬を赤く染めている。
ふむ。フェミリアの戦闘スタイルは、素早さで翻弄して一撃で決めるタイプか。
斥候のようなスタイルだな。
「見た感じ、フェミリアは斥候タイプのように思えるな」
「罠……たぶんだけど分かる」
なに!? 罠を発見出来るのか?
それじゃ本当に斥候じゃないか。
「人間が私達を捕まえて奴隷にする為、森に色んな罠仕掛けた。私たちは罠を発見出来ないと生きていけない。最後は捕まっちゃったけど……」
なるほど。
そういう理由なら、納得だ。
「まったく、ひでぇー事するな人間ってのは!!」
ユースケが憤っているが、おれもユースケもその人間なのでなんとも言えない。
「ならこれから先頭はフェミリアに任せてもいいか? 斥候として頼みたい」
「了解。任せて」
これで斥候、剣士、魔術師となった訳か。
まぁ厳密に言うと違うが。
だがまぁ、バランスがいい組み合わせじゃないだろうか。




