迷宮へ
武器屋を出たおれ達は、街の中心部へと向かった。
そこに迷宮があるからだ。
この街は迷宮があるからこそ成り立った街であり、迷宮から得られる素材を中心に回っている。
迷宮を中心として発展していったから、街の真ん中に迷宮への入り口があるのだ。
迷宮へ行く前に、冒険者ギルドに行って依頼を受ける事も考えたが、今回は初めての迷宮という事で、まずはどんなものか見てみようと思い、依頼は受けなかった。
迷宮に近づくにつれ、街が活気を帯びてくる。
出店なんかもそうだが、迷宮の入り口付近には、地図屋なる者たちがいた。
「一階層の地図、今ならたったの大銀貨一枚半だよ!」
「こっちの地図は大銀貨五枚だが、罠の位置まで詳しく描かれてるよー」
「三階層までの通路が描かれた地図、金貨一枚だよー!」
どうやら迷宮内の地図を売っているようだ。
いずれ買う事になるかもしれないが、品質にバラつきがあるようだし、その時は注意して見極めないとな。
その他にも、迷宮前の広場には、この街ならではの職種がいた。
「三階層! 三階層まで行けますよー!」
「一階層の隅から隅まで案内出来まーす」
「四階層まで連れていけます。金貨三枚です」
あれは案内人と呼ばれる者達だろう。
その名の通り、迷宮を案内してくれる者達だ。
地図だけでは分かりづらい事もあるからな。
実際に案内してくれるのだから、安心だろう。
さて、おれ達は今回が初めての迷宮だが、どうするか。
「ユースケ、地図や案内人がいるが、どう思う? おれは、初めての迷宮だから、まずは自分達の目で確かめてみたいのだが」
「おれもアルの意見に賛成だ! やっぱり冒険は未知でないとな!」
ユースケも同意している事だし、今回は地図も案内人も無しで入ってみるか。
迷宮の入り口に並ぶ。
入り口と言っても、洞穴か何かがある訳ではない。
おれ達の番が近づいてきて、管理している衛兵に三人分の入場税、銀貨三枚を払う。
そして足を進めると、そこには魔法陣が描かれた台座があった。
そう。これこそが迷宮の入り口なのだ。
転移魔法陣。
どうなっているのか、魔法を知るおれでさえ分からない、未知の技術。
この魔法陣の上に乗って、行きたい階層を唱えれば、その階層に転移出来るのだ。
ただし、一度でも行った事がある階層にしか飛べない。
今回、おれ達は初めてなので、もちろん一階層からだ。
「準備はいいか?」
「おうよ!」
「大丈夫」
「じゃあ、行くぞ! 一階層!」
そう唱えると、魔法陣から光の粒が浮かび上がり、おれ達を包み込む。
そして、魔法陣の上に乗ったおれとユースケとフェミリアは、その場から消えた。




