迷宮都市コサイム
「着いたぞ! ここが迷宮都市コサイムだ!」
門を抜け、街の中に入った時、クルドがそう言った。
やっとたどり着いたか。
盗賊に襲われたせいで、予定が一日遅れてしまった。
だが、あの盗賊の頭には懸賞金がかかっていたようで、門で事情を話し、詰め所に連れていかれてから報酬を貰えた。
まぁ、アイサン達と山分けしたから微々たるものだったが。
おれは、腰の袋から大金貨三枚を取り出し、クルドに渡す。
「これが後払いの報酬だ」
「ありがとよ。あんたらには感謝している。おかげで専属の護衛を失わずに済んだ」
「なに、気にするな」
おれ達は、アイサン達とも言葉を交わし、この場で別れた。
さて、迷宮都市というくらいだし、噂の迷宮を見てみたいものだが、まずはギルドと宿だな。
「ユースケ、まずは冒険者ギルドに行こう。所属を変更しなくちゃならん」
「そうだな。確かギルドはオリゴに聞いた話だと、あっちの方だな」
おれ達は冒険者ギルドに向かった。
所属を変更するためだ。
所属の変更とはそのままの意味で、コサイムの冒険者ギルドに所属する事を意味する。
ちなみにおれらは、まだラース支部所属のままだ。
この街に所属を変更すれば、ラースでそうだったように、入場税が取られる事がなくなる。
というか、所属を変更しないとこの街で依頼を受ける事が出来ない。
だからあらかじめラースでエリスに頼んで、所属変更の書類は用意して貰っている。
この書類がなければ、駆け出しの五等級からのやり直しになる。
二等級以上の場合、書類を用意出来ていなくても、どうにかなるらしいんだがな。
やはり高い等級の者には融通を利かすということなのだろうか。
ありふれている三等級以下と違い、二等級から冒険者の数はぐっと減るからな。
一等級なんてそうそうにいない。
だが、おれはこの街で一等級を目指すつもりだ。
この街には迷宮があるからな。
深く潜っていけば、一等級へのランクアップ対象の魔物もいるだろう。
「アル、ここじゃねーか?」
考え事をしていたら、冒険者ギルドに到着したようだ。
中へ入り、受付嬢に要件を告げる。
「所属の変更をしたい」
「はい。承りました。所属していたギルドから発行された書類はお持ちでしょうか?」
「これだな」
おれとユースケの二人分の書類を出す。
「アルグラウン・フォングラウス様と、ユースケ・フジキ様ですね」
「あぁ。おれがアルだ。そしてこっちが……」
ん? ユースケがいない。
どこいったんだあいつ?
振り返るとユースケは絡まれていた。
「だからフェミリアが嫌がっているだろ!!」
「うるせぇ! ガキのくせにいっちょ前に獣人の女奴隷なんか持ちやがって!」
「ガキだと悪いのかよおっさん!!」
「誰がおっさんじゃゴラァ!? おれはまだ二十九だ!!」
「おっさんじゃねーか!」
「うるせぇ! うるせぇ! うるせぇ!」
なにをやっているんだあいつは。




