盗賊
「何事だっ!?」
クルドが大声を出す。
どうやら先行していた護衛が乗っている馬車が急停止したので、こちらの馬車も止まったようだ。
「盗賊だっ!! 馬がやられた! かなり数がいやがる! 親父さん、逃げてくれ!!」
オリゴの叫び声が届く。
盗賊だと!?
コサイムまでもう少しだというのに!
「くそっ! お前ら、しっかり掴まってろよ!!」
クルドは馬車を走らせようとしている。
おそらく護衛の者達を置いて、駆け抜けるつもりだろう。
「おいっ! 見捨てるつもりかよ!!」
ユースケが騒ぎ出す。
まぁ、こいつの性格からいって、黙ってはいられないだろうな。
「あいつらが逃げろって言うんだ! 相当数がいるに違いねぇ! おれ達がいても邪魔になるだけだ!!」
ふん。邪魔になるねぇ。
このおっさん、忘れているんじゃないか?
「おい、クルド。お前、おれ達が冒険者だって事忘れてるんじゃねぇか?」
そう言うと、一瞬クルドはハッとした顔になったが、すぐに表情を改めた。
「だがな、お前さん達随分と若いじゃねぇか。どうせ駆け出しなんだろ? 粋がるんじゃねぇよ」
「ハッ! ずいぶんと笑わせえてくれるじゃないか。おいユースケ、おれ達が駆け出しだとよ」
「おっさん、おれとアルはこれでも三等級冒険者だぜ?」
そう言って、ユースケは服の中から鉄でできた冒険者証付きのペンダントを取り出す。
「なっ!? お前ら、王都の冒険者じゃないのか!?」
「おれ達はラースから来た。王都の駆け出しのガキと一緒にするんじゃねぇ」
「そうだぜおっさん。なんたっておれらはゴブリンキング倒してるんだからよ」
「ゴブリンキングだと!?」
「あぁ。おれとユースケはゴブリンの大軍勢からも逃げなかった。今更盗賊なんかで逃げてられるかよ!」
そう言って、おれは馬車から飛び出した。
後ろからユースケがついてくる。
「まて! お前ら!」
おれとユースケは、駆ける。
護衛達が乗る馬車に近づくと、矢が飛んできた。
「ユースケ! おれの真後ろを走れ!」
そう言って、おれは飛んでくる矢を剣で撃ち落としていく。
「無事かっ!?」
馬車は盗賊に半円状に囲まれていた。
アイサンとハンファが前に出て戦っているが、苦戦しているようだ。
ハンファの右肩には矢が突き刺さっている。
その後ろではオリゴが弓を構え、セリーヌが魔術を放っている。
アイリスは光属性の光の壁の魔術を発動し、オリゴとセリーヌを盗賊が放つ矢から守っている。
「なんで来たんだ!?」
アイサンが盗賊と切り結びながら叫ぶ。
「おれとユースケは盗賊如きからは逃げない! 行くぞ! ユースケ!」
「おうよ!」
盗賊はざっと二十人弱ってところか。
さて、迷宮都市に行く前にひと暴れしますか!




