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契約

「なるほどな。だけどそれじゃあ、迷宮でお宝を見つけた時なんかはアルの物になっちまうのか」


「そうだな。給金に加えて、稼いだ金額の一割を出すというのはどうだ?」


 給金のみだとやる気も出ないだろうしな。

 冒険者としての活動に魅力も感じさせないとな。


「一割かぁ。それなら、給料によるな」


「一月ごとに大金貨一枚というのはどうだ?」


「大金貨一枚!? そんなにくれるのか!?」


「あぁ。それに加えて報酬の一割だ。稼ぎが良くなってきたら、給金の額を上げてもいい。ただし、これはユースケの実力とフェミリアという獣人の奴隷を持っている事を考慮しての額だ。フェミリアにおれが金を払う事はないから、そこは主人としてユースケが渡すなりなんなり考えてくれ」


「そっか。分かった! それでいい! アル、おれを雇ってくれ!」


「契約成立だな。貸し馬車の金はおれが出そう。赤字にならないように頑張ってくれよ?」


「あぁ! もちろんだ!」


 これでユースケと話はついた。

 迷宮は深い層になればなる程、稼ぎは良くなると聞く。

 おれとユースケの実力なら、それなりに深い層へも潜れるだろう。


 赤字になってくれるなよ?

 この博打のような契約は、全てはおれの夢をかなえる為だ。


 自分の国を持つという夢。

 その為には、金はいくらあっても足りないからな。


 報酬を分配するより、大部分をおれが受け取れる契約を結んだって訳だ。

 これで月に大金貨一枚以下の稼ぎしかないなら、大失敗だな。

 頑張らないと。


「すまない、話は終わった。大金貨六枚でいい。コサイムまで頼む」


 ユースケとの話終えて、おれは改めて貸し馬車業者の男に話しかけた。


「あいよ。出発はいつだい?」


「出来るだけ早くがいい」


「なら、明日だな。今日のうちに準備しとくから、明日の朝またここに来な。おっと、自分たちの食料やらなんやらは、準備しといてくれよ? おれらの分はおれらで用意するからよ」


「分かった。では明日から頼む。ユースケ、フェミリア、買い出しに行くぞ」


 おれ達はその場を立ち去り、市場へ向かった。


「よし、必要な物を買い揃えるぞ。といっても旅の道具は各々持っているから、食料が主だな。これも諸経費としておれが金を出す」


「なぁ、アル。おれのアイテムボックスは入れた物の時間が止まるんだし、出来立ての飯買わね? ラースを出た時はすっかり忘れてたけどさ。今回は事前に準備出来るんだし」


「そうだな。それじゃあ金を渡すから、ユースケとフェミリアは出店なんかで食い物を買ってきてくれ。おれは一応、通常の食材を購入しておく。待ち合わせは、そうだな……」


「待ち合わせはギルドでいいんじゃね? あの場所から近くに、前おれが泊まった宿屋があるんだ。まだ今夜の宿も決めてないし、そこでどうだ?」


「それで構わんよ。ならギルドで待ち合わせだな」


 ユースケに金を渡し、おれ達はそれぞれ行動しだした。

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