貸し馬車
ギルドの受付嬢に聞くと、貸し馬車を行っている業者の場所は分かった。
ギルドを出て、教えられた場所に向かう。
どうやらだいぶ街の外側で営業しているようだ。
おれ達は通ってきた道を逆戻りして、外壁に向かうように歩いた。
「ここがそうだな」
「みたいだな。すいませーん! 誰かいますかー?」
「はいよー」
ユースケの声に反応して、建物の裏手から男が出てきた。
「なんだ、客か?」
「はい! 迷宮都市コサイムまで行きたいんですが」
「コサイムかぁ。なら二十日ってところだな。護衛の代金も含めて、大金貨六枚だな」
「そんなにするのかよ!?」
「うちは安全を売りにしているからな。護衛が五人は付く。だから馬車も二台必要になるんだ。高いと思うなら、よそに行きな」
「ちょっと待ってくれ。おれ達は冒険者だ。行きの護衛はおれ達でするからもう少し安くならないだろうか」
いくら金があるといっても、出来るだけ無駄な出費は抑えたいからな。
「ならないね。行きはあんたらが護衛すればよくても、帰りはどうすんだい?」
「コサイムで冒険者を雇えばいいだろう?」
「もし王都に行きたがる冒険者がいなかったら? 護衛が見つかるまで、コサイムで何日も拘束されたら、その分だけ商売あがったりだ。それにうちには専属で雇っている護衛がいる。質がしれない冒険者を頼りには出来ないね」
そう言われてしまったら言い返す言葉もない。
さて、どうしたものか。
「アル、どうする?」
「そうだな……すまない、少し席を離れてもいいだろうか?」
「あぁ、構わないぜ」
おれとユースケとフェミリアは、少し離れた場所に移動し、話し合う事にした。
「ユースケ、出せるか?」
「三人で割って一人当たり大金貨二枚だろ? フェミリアのと合わせて大金貨四枚……無理だな」
「いや、フェミリアは奴隷だからおれとユースケで頭割だ。大金貨三枚だな」
「うーん……それでも厳しいかな……」
「だが、ユースケは出来るだけ早くこの街を出たいんだろ?」
「そうなんだよなぁ。なぁ、アル、立て替えてくんねぇ?」
また借金か。
別に貸してやってもいいが、借り癖がついては困る。
それにユースケは奴隷のフェミリアも計算に入れていた。
奴隷は物だから普通は人間として数えない。
おそらく奴隷の事がいまいちよく分かっていないんだろう。
ここは先を見据えて話しておくべきか。
後々、報酬の事で揉めるのは面倒だしな。
そうだ!
報酬含めていい考えが浮かんだ。
ユースケに提案してみよう。
さて、受け入れてくれるかどうか……




