やり残した事
あれからユースケと相談して、迷宮都市コサイムを目指す為、一旦王都行きの護衛依頼を探す事になった。
エリスに相談すると、護衛依頼はすぐに見つかった。
なんでも、おれ達は今やこの街の英雄として有名な為、王都へ行く商人に告げると是非にと懇願してきたそうだ。
しかも、最初は王都へ行く馬車に便乗させて貰えるなら、護衛料はいらないと思っていたが、商人の方から払わせてくれと言ってきたらしい。
なんでも、この街を救ってくれた英雄にただ働きさせるなんてとんでもないという事だそうだ。
非常にありがたい。
出発は明日なので、今日のうちに荷物を纏めなければいけない。
まぁ、おれもユースケも、アイテムバッグやアイテムボックスを持っているからすぐに終わったが。
ユースケは余った時間を使って、フェミリアの服や生活用品を揃えるのに奔走している。
服は謝礼金を使って、めいっぱいオシャレなのを選ぶと意気込んでいた。
おっと、おれも食料なんかを調達しなくちゃならんな。
ユースケの分も買っておくか。
あいつ忘れてそうだし。
あとから少し多めに金を請求しよう。
おれのアイテムバッグは、ユースケのアイテムボックス程ではないが、"健康"の魔法を使っているので食材が腐りにくい。
だから食料も、日持ちする干し肉だけでなく、新鮮な野菜や果物も買っておく。
調理道具も忘れずに購入しないとな。
ユースケのアイテムボックスみたいに、異次元に収納出来るなら、調理済みの料理を買い占めるのだが、おれのアイテムバッグは収納物を小さくするだけだからなぁ。
いつか、ユースケのアイテムボックスを再現出来ないだろうか。
そんな事を考えながら歩いていると、いるの間にか裏路地に来ていた。
おっと、道を間違ったようだ。ん?
「この裏路地、なんだか見覚えがあるな。昔来たことがあるような……」
すると、おれの目の前にいつか見たカエルが飛び出してきた。
「このカエル、あの時のカエルか?」
カエルは何かを訴えかけるように、ぴょんぴょん撥ねながら煩いくらい鳴いている。
「ゲーコゲコゲコゲーコ! ゲコゲコゲーコ!」
カエル、そして裏路地……
なにか思い出しそうだ。
「んー……思い出せん。帰ろう」
「ゲコッ!?」
カエルはショックを受けたように固まる。
「嘘だよ。ガントル、お前だったんだな。ゴブリンキングの時助けてくれたのは。お礼に魔法は解いてやるよ」
『ユン・フローグ・リ・チェイン!!』
古代語を唱え、光り輝くカエルの結末を見ることなく、おれはその場を立ち去った。
後ろから大声で泣き喚く男の声が聞こえたから、無事元の姿に戻れたのだろう。
さて、これで本当にこの街でやり残した事はなくなった。
新たな旅へ出発だ。
「キャアアァーーー!!? 変態よ!! 誰か衛兵呼んできてぇーーー!!!」
女性の悲鳴が聞こえる。
そういえば、カエルから戻ったという事は、ガントルは今裸だったな。
見なくてよかった。
おれは特に気にすることもなく、その場を後にした。
これにて第一章の閉幕です。
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