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ギルドマスター

 突如現れた筋骨隆々の厳つい男の怒声により、冒険者ギルドは静寂に包まれた。


「ギルドマスター……」


 誰かがぽつりと呟いた。


 あれがギルドマスターか。

 確かに見ただけで強そうで、荒くれ者の多いこの冒険者ギルドを治めるのには、もってこいの存在かもしれない。


「これより、冒険者全員に緊急依頼を出す! ゴブリンの討伐、ラースの街の守備任務だ! この依頼は強制だ! 逃げ出すことは許さん! 逃げ出した者は冒険者証を永久に剥奪する!! この街の為に戦うのだ! ラース卿より冒険者を守備隊に組み込む事は許可を貰っておる。 この場にいない冒険者にも声をかけて、南門前へ集まれ!!」


 一方的にそう告げ、ギルドマスターは二階へと上がっていった。


 逃げ出したら冒険者証の剥奪か。

 まぁ、こういう事態に動くことを理由に、国に冒険者ギルドという軍事力(・・・)を認めさせているのだろうから当然か。


 どうすればいいか分からず、慌てふためいていた冒険者達が動き出す。

 これから南の門へ向かうのだろう。


「アル、おれ達も行こうぜ」


「あぁ。だが一度、装備を取りに宿へ戻ろう。防具も無しじゃ、心もとない。ポーションだって持っておきたいからな」


「そうだな。アルはどこの宿屋に泊まっているんだ?」


「鈴なり亭だ」


「鈴なり亭っていうと、確かあそこか。おれも近くに宿を取っているから一緒に行こうぜ。この混乱じゃ、知り合いが傍にいた方が心強いしな」


「そうだな」


 そういう訳で、おれとユースケは共に宿屋へ行き、装備を整えてから南門へと向かった。


 街中は酷い混乱だ。

 住民たちが荷物を纏めて北側へと向かっている。

 ゴブリンがいる南側とは逆の、北側へ避難するのだろう。


 南門へ近づくにつれ、住民の姿は減っていき、到着したその場には武装した兵士と冒険者しかいなかった。

 だいぶ集まっているな。


「魔術が使える者は外壁の上へ上がれ! それ以外の者は、門の内側に防壁を作るのを手伝え!! ゴブリン共はすぐそこまで迫っているぞ! 急げ!!」


 重厚な鎧を身にまとった騎士らしき者が指示を出している。

 おそらくこの中で一番偉い人間なのだろう。


「どうやらおれは、外壁の上に行かなきゃならんみたいだ。アルとは一旦お別れだな」


「いや、おれも上へ行くぞ」


「え? アルって剣士じゃなかったのか?」


「剣士だが、魔法も使える」


 魔術じゃないが、まぁ似たようなもんだろう。

 ここで出し惜しみはなしだ。


「魔法? そういえば前世で魔法使いだって言っていたな。魔術みたいなもんか?」


「まぁ、厳密に言うと違うが、攻撃魔術なんかと似たようなことは出来る」


「そっか。すげーなアルは。魔法剣士って奴か」


「まぁな」


 さてと、本気を出すとしますか。

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