表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/125

怒声

 街の鐘は、時間を告げるのに、回数を決めて鳴らすものだ。

 それが今は連続して鳴っている。


 緊急事態という事だろう。

 そんなにゴブリンの数が多いのか。


「大変だっ!! ゴブリン共は、千匹以上いやがるっ!!」


 荒々しくギルドの扉が開かれ、入ってきた男が息を切らしながらも大声でそう言った。

 おそらく斥候に出ていた人間だろう。

 ギルドは一瞬の静寂の後、蜂の巣を突いたように騒がしくなった。


「千匹だと!?」

「そんな馬鹿な!」

「なんでそんなに増えるまで気付かなかったんだ!?」

「どうすりゃいいんだよ……」

「ラースは持ちこたえられるのか……?」


「みなさん! 落ち着いてください!」


 エリスが落ち着くよう叫んでいるが、とてもじゃないが静まる様子はない。


「エリス、どういう事なんだ? ゴブリン千匹というのは、多いのは分かるが、そんなに脅威なのか?」


「アルさん……。そうですね、ラースに長く住んでる人なら分かると思うのですが、この街の人口は一万人程です。そして、衛兵やラース騎士団の人数は、合わせて三百人程です。これに冒険者の数を合わせても、五百人いるかどうかでしょう……」


「つまり敵の戦力は二倍という事か?」


「単純に考えるとそうなります」


 二倍か。

 そう考えると、少しきつそうだな。


「へっ! なにビビってるんだよアル! 攻める側は守る側の三倍は必要だって言うだろ? 千匹くらい余裕じゃねーか!」


「そうは言うがなユースケ、ゴブリンは一匹に対して一般人なら大人二人必要だろ? 冒険者なら問題ないが、実力の分からない衛兵や騎士団が主力なんだから不安にもなるだろ」


「そうですね。衛兵と騎士団合わせて三百人といっても、その全ての人間が戦える訳ではありません。後方支援の部隊などありますから。それに、冒険者と違って魔物との戦闘に慣れていませんし、ゴブリンだっておそらく上位種が多数いる事でしょう。そう考えると、戦力差は単純に二倍とも言いきれません」


「そっか……。おれら冒険者と違って、騎士団なんかは訓練が主だからな。衛兵なんか喧嘩の仲裁くらいで、碌に戦闘なんてした事ないだろうしな……。」


 そういう事だ。

 だからこちらが守る側でも、気を抜く訳にはいかないんだ。


「とりあえずどうするかな。この街を見捨てる訳にはいかないし、だが個人で動くのも迷惑になる可能性があるしな」


「おそらくギルドから緊急依頼が出るはずです。今ギルドマスターがこの街の領主であるラース卿の元へと行っています。帰ってきたらすぐにでも」


「静まれえええぇーーー!!!」


 喧噪としていた冒険者ギルド内に、怒声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ