スマホ
衛兵に案内されて、城門の外まで出たユウスケは、これからどうするべきか考えた。
「あんまり王様とかには関わりたくないよなぁ。スドウ達には悪いけど、まぁ、あいつらは選ばれし勇者ってやつなんだから、なんとかなるだろ。問題はおれがこれからどうするかだが……」
ないとは思うが、後からまた絡まれても面倒だし、この王都は出たい。
だがその為には先立つものがいる。
「金が必要か……。日本円は使えないだろうしな。お約束の冒険者ギルドで稼ぐってのもいいが、出来れば王都で登録はしたくないな。それで足取りがバレるかもしれないし。そうだ……!!」
ユウスケはポケットからスマートフォンを取り出した。
「バッテリーは三十パーセントちょいか。これならまぁ、いけるだろ。」
その後、ユウスケは街中を歩き回り、一件の商店の前に来ていた。
ユウスケが見て回った中で、一番店舗が大きかった商店だ。
「ここならいけるだろ」
そう言って、ユウスケはその店の中へ入っていった。
一時間後、商店から出てきたユウスケの手には、スマートフォンではなく、小さな袋が握られていた。
「スマホを売って金に換える作戦は上手くいったけど、絶対ぼったくられたな。金貨三枚ってのが、どれくらいの価値があるか分からねぇけど。まぁ、どうせバッテリーが切れたら意味ないんだしいいか。それに気付いて金返せって言われるのも面倒だし、早くこの場を立ち去ろう。おっと、服も売り払って、異世界風の格好にしなくちゃな」
そうして金を手に入れたユウスケは、服と靴を買い、格好を改め、その日は王都の宿屋に泊まった。
◆◆◆
「そうしてその次の日に、ラースへ向かう行商人を見つけて、金を払って馬車に乗せてもらって、この街にたどり着いたという訳さ」
「なるほどな」
ユースケの長い話が終わった。
どうやらユースケは、勇者召喚に巻き込まれた存在らしい。
だが、本人はそれを誇らしげに語った。
どうやらユースケのいた世界では、召喚に巻き込まれた者の方が凄いというのが常識らしい。
変わった常識だな。
「それで、そのステータスやスキルというものは何なんだ?」
「あぁ、ステータスってのは、その人物のレベルや筋力とかの……なんていうか、強さを数値化したものだ」
「ほう。それはおれにも見えるのだろうか? ステータスオープン!!」
意気揚々と呪文を唱えてみたが、何も変化は訪れなかった。
どうやら召喚された者の特権のようだ。
「その様子だとダメだったみたいだな。アルも転生者ならいけるかもって思ったんだが、やっぱ召喚された人間しかステータスは見れないみたいだな」
「どうやらそうらしい」
おれは少し残念に思った。




