転生者
「あぁー、マジかぁー……」
今更ながらに現実感が襲ってきたのか、ユースケはひどく落ち込んでいる。
ふむ。この状況をユースケが転生者かどうか確認するのに利用出来ないだろうか。
仮に隠していたとしても、今ならポロっと喋りそうだ。
「まぁ、今更後悔したところでしょうがないさ」
「そうだな……」
「元気だせよ」
「うん……」
「本当だったら物語みたいに、上手くいくはずだったんだろ?」
「おう……」
「そういう物語が流行っていたのか、ユースケがいた世界では?」
「そうだな……」
「それでこの世界で似たような状況になったから実践してみたんだな?」
「そうだよ……あれ?」
ふむ。確定か。
「やっぱりユースケは転生者だったんだな。」
「え? なんでその事をアルが!?」
「さっき自分で言ってたじゃないか。世界がどうのこうのと。それで確信したんだよ。ユースケが別の世界から来た転生者だとな」
「そっか……。まぁ別に隠してる訳じゃないからいいけどな。ただ誰も信じてくれないだろうと思って、言わなかっただけだし」
やはりユースケは転生者だったか。
いや、おれと違って元の体のままこの世界に来たようだし、この場合は転移者と呼んだ方がいいのか?
「街で勇者の噂を聞いたからな。それにギルド登録の時に"この世界では"と言っていたのを思い出してな。それでユースケが、転生者、いや転移者か召喚者か? とにかくそういう存在だろうと思ってカマをかけてみた訳だ」
「転生者でいいよ。おれがいた世界の物語じゃ、そう呼ばれるのが一般的だったから」
「分かった」
「でも、よくそれだけで転生者だって信じたな。いくら勇者の噂を聞いていようと、噂は噂だろ? ぶっちゃけ信じてない人間の方が多いと思ってたんだが」
「あぁ、そりゃおれも転生者だから信じるさ」
「そっか。アルも転生者……ってえええぇーーー!!?」
ユースケは正直に認めたんだし、おれもカミングアウトしてもいいだろう。
「あぁ。おれも別の世界を知る転生者だ」
「マジかよ……おれらの他にも召喚された人がいたなんて……。てことはアルは外国人、ヨーロッパの国の人間か?」
「いや、おれはその"よーろっぱ"という国は分からないが、ユースケが考えている事とは違うと思うぞ?」
「え? ヨーロッパを知らないって……でも金髪碧眼だし……アメリカか? でもアメリカ人でもヨーロッパは知っているよな……」
「ユースケ、聞いてくれ。おれは召喚されたんじゃない。正真正銘"転生"したんだ」
ユースケとはだいぶ事情が違うようだしな。
どう説明したもんか。




