取引
オークションは無事に終わった。
ユースケは奴隷を得たし、アイテムバッグは大金貨百七十枚で落札された。
おれらは今、係員に誘導されて、会場の裏手の部屋に向かっている。
そこで正式な取引をするらしい。
順番からいって、獣人奴隷の取引が先だが、それだと金がないのでアイテムバッグの取引を優先させてもらっている。
「アルさん!」
到着した部屋には、エリスがいた。
「アルさん、アイテムバッグの落札おめでとうございます。これで大金持ちですね」
「ありがとう。エリスもボーナスが期待出来るんじゃないのか?」
「フフフ、そうですね。ところでユースケさん、もしや先程獣人の奴隷の方を落札されたのはユースケさんでは?」
ばっちり見られているなユースケ。
なんせ目立ってたからなぁ。
「あぁ、おれだぜ! アルに金を貸して貰ったんだ! これで一歩奴隷ハーレムに近づいたぜ!」
ユースケは嬉しそうに答える。
「はぁ……。やっぱりそうですか。ユースケさんが奴隷ハーレムを目指すのは構いませんが、ご自分が奴隷にならないように気を付けてくださいね」
エリスはどこか呆れ気味だ。
まぁ、大金貨五十枚もの借金を、たかが奴隷のためにしたのだ。
当然だろう。
おれらがそんな雑談をしていると、扉が開かれ三人の男達が入ってきた。
どうやら一人は運営の人間らしく、おれたちに席を勧めてくる。
おれとエリスは席に着いたが、ユースケは立ったままだ。
どうやらこの取引とは無関係だからか、席に着くつもりはなさそうだ。
おれたちの向かいには二人の男が座る。
見た感じ、商人とお付きの人間といった様子だ。
「さて、ご着席ありがとうございます。こちらはアイテムバッグの出品者のフォングラウス様とそれを仲介した冒険者ギルドの職員の方です。」
「アルグラウン・フォングラウスです。落札して頂きありがとうございました。」
おれは軽く頭を下げながら、そう言った。
エリスも丁寧に頭を下げている。
「いやいや、こちらこそこんな素晴らしい品をご出品頂き感謝しておりますぞ。申し遅れました、私、ダート商会の会長をやっております、ダートと申します。以後お見知りおきを」
ダート商会、聞いたことがある。
というかこの街では知らない人間はいないだろう、有名な商会だ。
確かおれがペンダントを買った雑貨屋も、ダート商会の系列だったはずだ。
なるほど。
資金力があるわけだ。
「今回出品されたアイテムバッグは素晴らしい物ですな。生き物を収納できるなど、そのようなアイテムバッグの話は聞いたこともありません。これは凄い事ですぞ」
ダートさんは少し興奮気味にそう話す。
確かに今回おれが作ったアイテムバッグは珍しいかもしれないが、明らかに欠点がある失敗作だ。
その辺はどう考えているのだろうか。
「あの、そのアイテムバッグですが、代わりに物を取り出す時不便だという欠点があるじゃないですか。たぶん商売で利用するのは難しいと思うのですが、どうされるおつもりですか?」
おれは疑問を直接ぶつけてみた。




