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借金

 少し冷静に考えてみよう。

 ユースケの要望に応える事は……たぶん可能だ。


 エリスもアイテムバッグは、大金貨百枚以上になるはずだと言っていた。

 清算は後のようだし、ここで金を貸すことは出来るだろう。


 問題は貸した金が返ってくるかどうかだ。

 ユースケは現在、おれと同じ四等級冒険者。

 普通に考えたら返済は無理だ。


 だが、ユースケはサンドリザードとの戦闘で二属性の中級以上の魔術を使って見せた。

 将来は有望だろう。


 それにユースケはおれの自作品と違って、本物のアイテムバッグを持っている。

 最悪これを売れば、十分な金になるだろう。


 うん。

 こう考えると、貸す事は問題ないな。

 ちょっと変わっているが、割といい奴だし、金を返さず逃げる事はないだろう。


 仮に逃げたられても、偶然手に入る予定の大金だ。

 またアイテムバッグを自作して売ったら金は手に入るだろう。


 その場合、かなり怪しまれるだろうが。


 うーん。

 どうするべきか。


 ユースケに金を貸すことは出来るが……その場合のおれのメリットはなんだ?


 そうだな、まず一番に思いつくのは利子を取る事だな。

 そうすれば上手く回収すれば、元の金額以上の金が手に入る。


 そして次に、心情的にユースケを仲間に引き込めるという点もあるな。

 まだたった一度、臨時のパーティを組んだだけという間柄だが、金を貸せば結びつきは強くなるだろう。


 正直ユースケの戦闘力は、身のこなしに荒いとこが目立つが、四等級としては破格だ。

 魔術の腕だけを見れば、三等級、いや、二等級でも通用しそうだ。


 そんなユースケを仲間に出来るのは強みになる。

 冒険者を続けるにしても、いつかは仲間が必要になるはずだ。

 一人で出来る事なんてたかが知れてるしな。


 それに勇者との繋がりも持てる可能性がある。

 ユースケが本当に転生者だったらだが。


 というか、もしユースケが転生者だったら、別の世界の文明を知っているんだし、おれが国を造る時に色々と知恵を出してくれるかもしれないな。

 おれもこの世界の人間が知らない、魔法というものを知っているんだし、なんらかの知恵を期待してもいいだろう。


 よし、決まりだな。

 ユースケに金を貸そう。


 現在の落札値は……大金貨四十枚か。

 勢いに陰りが見えるし、そろそろ落札者が決まりそうだ。


 そうだな、大金貨五十枚程貸せば十分だろう。


 利子はどのくらいがいいだろうか。

 あんまり暴利を貪りすぎると、信頼関係に亀裂が入りそうだな。


 よし、大金貨十枚程度でいいだろう。

 大金貨五十枚貸して、返して貰う時は大金貨六十枚だ。

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