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魔術

 皆魔法を使えるといったが厳密に言えば魔法ではない。

 この世界の人間は魔法のことを"魔術"と呼び、魔法使いは"魔術師"と言われている。


 幼いころ初めてこの世界の人間が魔術を使ったのを見たときおれは思わず「魔法だ……」と呟いてしまったが、その時は家族中に笑われた。

 魔法ではなく魔術だと。

 魔法なんてのはおとぎ話の存在だと。


 その時からおれは魔法と魔術の違いが気になっているのだが、なんせ家族は剣の家系の脳筋共ばかりで、嫁いできたであろう母親に聞いても「魔法は何でも夢が叶うけど、魔術はそうじゃないでしょ」といった要領の悪い答えしか返ってこなかったのだ。


 だからおれは十五歳の成人を目途に世界中を見て回る旅に出ようと思っている。

 本音を言ったら剣より魔術を学びたいのだ。

 様々な魔術を覚え、魔法との違いを解明したい。

 そして魔を探求したい。


 そしてそれとは別におれには夢がある。

 いや、その為の夢と言ったがいいか。

 王になり自分の国を持つことだ。


 前世では平民の身分から旅の魔法使いに魔法の才を見出され、魔法を学び魔法使いとなり、古代語を研究して"大魔法使い"や"最凶の魔人"とまで呼ばれるようになり、王に知恵を貸す王家公認魔法使いの身分までなれた。


 しかし、一番ではなかった。

 もちろん魔法使いの中では抜きんでた実力を持ち自他共に認める頂点にいたが、その魔法使いという括りを解けば上には必ず王がいた。


 おれは別にそれでもいいと思っていた。

 なんだかんだで魔法が全てだったからだ。


 しかしその王の命令で魔法使い狩りが行われた。

 王家公認魔法使いの身分など吹けば飛ぶようなものだったのだ。


 だからだろうか、今世では誰かに身分の保証をしてもらうような立場ではなく、自分が他者の身分を保証してやるような立場になろうと思っている。

 生まれ変わって新しい体になったからだろうか。

 考え方が若々しいというか、一端に野望や大志をいだくようになっている気がするが。


 思えば前世は甘かった。

 "不死"の古代語の解明が間に合ったからよかったようなもの、一歩間違えれば魔を探求するという志半ばで倒れていたかもしれないのだ。


 今度は誰にも邪魔させない。

 世界は己が為に。


 そう思えば剣術の訓練も悪いものじゃないかもしれない。

 魔法使いは接近戦や不意打ちに弱い。

 それはこの世界の魔術師にも言える事らしい。


 親父殿の言う常在戦場とやらも一理ある。

 もっと真剣に特訓することにしよう。

 いや、今でも強制的に真剣にならざるをえないのだが。


 もう少ししたら十歳になる。

 世間一般では十歳から魔術を教えるらしい。


 貧しい平民は生活魔術を。

 余裕のある家庭はそれに加えて一般的な攻撃魔術などを。

 裕福な商家や貴族は家庭教師を雇い難しい魔術を学ぶ。

 その者の背丈にあった魔術を学ぶということだ。


 剣術馬鹿の我が家では生活魔術の他は、"身体強化"や"スラッシュ"など剣術に関する魔術を代々教えているらしい。

 身体強化はともかく、"スラッシュ"というのは魔術じゃなくて剣術なのではないかと疑問に思いつつも、魔術を学べるということに思わずワクワクしている自分に思わず苦笑いを浮かべた。

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