失敗
「え……なにそれ……どういうこと……?」
ユースケが何やら言っているが、おれはこの素材袋の検証で忙しい。
ふむ。重さはだいぶ軽減されているな。
あれだけの重量が入ったというのに、片手で持てる重さだ。
十分合格だろう。
さて、素材の腐り具合は検証に時間がかかるから、とりあえずちゃんと取り出せるか試してみるか。
袋の中に手を突っ込み……って、うわー。
腕が途中から異常に細くなっている。
自分で掛けた魔法の効果だが、少し気持ち悪いな。
まぁ気にしないようにしよう。
サンドリザードの死体を取り出そうと中をゴソゴソと探るが何も触れない。
一旦手を引っ込め、中を覗いてみる。
「しまった……」
中が広すぎて、素材に手が届かないじゃないか。
大失敗だ。
いくら収納できても取り出せないんじゃ意味がない。
この状況を回避するには更に魔法をかける必要があるが、もう体力は残ってないし、古代語の構築も面倒そうだ。
一応欲しかった機能については成功はしたのだし、これで満足しておくか。
というか、中に入れる時小さくなるんだから、袋の中身を広くする必要はなかったな。
解呪するのは面倒だし、体力が戻ったら新しい袋を買って試してみよう。
気分を入れ替え、おれは素材袋をひっくり返し、地面に向けて激しく振った。
するとサンドリザードの死体が、入った時の巻き戻しのように出てきた。
「よし!」
これで満足しておくべきだろう。
どうせ素材以外入れるつもりはないし、一遍に出てきて困る事もあるまい。
「よし、じゃねーよ! なんだよそれ!?」
「なんだってそりゃ……魔道具だが」
「魔道具だがって、納得出来るかぁー!? どう考えてもさっき何かしてただろう!?」
しまった。
つい夢中になって目の前で魔法を使ってしまった。
まぁ別に魔法の存在を隠している訳ではないのだが、説明するのがめんどくさい。
魔法はおとぎ話の存在だよなんて、笑われるのも気分が悪いしな。
「いや、これは我が家に代々伝わる希少な魔道具だ」
「絶対嘘だろそれ!? だいたい大したことない家とか、次男とか言ってたじゃねーか! なんでそんなもん持ってんだよ!!」
「いや、それは……。そういうユースケの方こそどうなんだ? その魔道具はどうしたんだ?」
「こ、これは……訳あって、その……」
よし。
やはりユースケもあまり詮索されたくないのか。
この線で攻めていこう。
「いや、言わなくていい。人には色々事情があるからな」
「そ、そうだな」
「だからおれの魔道具にも、色々事情があるから詮索は無しだ」
「っな!? 分かった……これ以上聞かない事にする。すっげー気になるけどな!!」
なんとかなったな。




