二属性
サンドリザードの攻撃を間一髪で避けたおれたちは、後方に下がり、体勢を立て直す事に成功した。
「ユースケ! 次の攻撃が来たらおれが剣ではじく! そのタイミングで攻撃してくれ!」
「了解! まかせとけ!」
初めて見た時は武器も防具も付けていなかったユースケだが、今では杖とローブを装備し、一端の魔術師然としている。
「来たっ!」
サンドリザードはその場に留まりつつ、再び舌を伸ばして攻撃してきた。
その攻撃をおれは後ろに飛びのきながら、巻き取られないよう気を付けつつ剣で弾く。
すると斬り落とす事は出来なかったが、その舌は明後日の方へ向かい弾ける。
「今だ!」
「おう! 氷投槍!!」
ユースケの持つ杖の先に魔法陣が浮かび上がり、そこから一メートル程の氷の礫が発射される。
水属性の中級魔術だろうか?
その速度は初級魔術のそれより速く、サンドリザードの顔面に直撃する。
「グギャアア!!?」
サンドリザードが怯む。
その隙におれは接近して、通り抜けざまに右の前足を斬りつけた。
「固いっ!?」
が、サンドリザードは思ったよりも固く、大してダメージを与えられなかったようだ。
急ぎユースケの元まで戻り、体勢を立て直す。
魔術師には前衛が必要だからな。
「くそっ、全然効いちゃいねぇ」
ユースケの言う通り、ダメージこそ入りはしたものの、サンドリザードの顔面は血が流れる事もなく無事なままだった。
「ユースケ、おそらくあの魔物の属性は土だ! ユースケの適性の水属性魔術じゃ通りが悪い。ここはおれが隙を見て急所を狙いに行くからユースケは」
「まてよ。誰の適性が水属性だって?」
ん? 何を言っているんだこいつは。
さっき水属性の中級魔術を使ったのはお前じゃないか。
「何を言ってるんだ。さっきの魔術はどう見ても中級以上だろう。中級以上の魔術は自分の適正ある属性のみ……」
って、まさかこいつは!?
「ふん! 土属性に効果抜群なのは確か……。あった。これでいいか。ポイント消費! スキル獲得! 食らえ! 鋭利な風!!」
旋風が吹き上げる。
砂が舞い、一時的に視界が閉ざされる。
風が成す轟音が収まった時、目を見開くとそこには全身から血を流すサンドリザードがいた。
「ユースケ、お前……」
「ふぅ。これでポイントなくなっちまったけど、こいつを倒せばまた入るだろ。」
二属性持ちだったのかこいつは。
それにしても、さっきから言っているポイントやスキルとは一体……?
「さっさと倒しちまおうぜ、アル?」
「あ、あぁ……」
どうやらこいつは口だけではなく、自信に見合った実力を持っているようだ。




