パーティ
「なるほどな。ならこの依頼は受けられないってことか」
「はい、申し訳ありませんが……」
「おれが一緒に受けてやるよ!」
おれとエリスの会話を遮って、そう告げたのは、いつの日か騒いでいた黒髪黒目の少年だった。
「おれの名前は藤木雄介! いや、この国風に言うとユウスケ・フジキだ! 名字があるけど貴族じゃないぜ!」
ふむ。名字持ちで貴族じゃないのなら、外国出身か。
確かに顔立ちが平たく、どこか幼いような印象を受ける。
この国の者ではないだろう。
それにしても、この国の周辺に平民でも名字を持つ事が許された国なんかあったか?
「自己紹介どうも。おれはアルグラウン・フォングラウス。貴族だが、貧乏男爵の次男だからそう平民と変わらない。家も出たことだしな」
「そうか。ならアルって呼ばしてもらうよ。なぁ、アルはこの依頼を受けたいんだろ? おれも色々な魔物と戦ってみたいし、一緒に受けようぜ? 一人だと受けれない依頼なんだろ?」
そう言いながら肩を組んでくる。馴れ馴れしい奴だ。
だが、本来三等級向けだったサンドリザードの特殊個体には興味がある。
依頼料だって二人で分けても十分な金額になる。
あとはこいつの実力次第だが……
「ユースケは確かついこの間冒険者になったばかりだと思うのだが、もう四等級になったのか?」
「あぁ、登録の時見られてたのか。まいったな、恥ずかしいとこ見せちまったぜ。魔物倒したらすぐランクアップするなら教えてくれってな。それでランクか。問題ないぜ! 昨日四等級に上がった! といってもすぐに三等級になるつもりだがな! なんたっておれは主人公なんだし!」
ランクアップの仕組みは登録の時教えてくれるだろ。
その説明を聞かずに騒いでたお前が悪いだろとは思うが、僅か十日ばかりで四等級にあがる程の実力か。
あながちあの時喚いていた実力とやらは嘘ではないのかもしれない。
所々意味不明な発言があるが。
「ほう。もう四等級か。早いな」
そう言うとエリスがジト目を向けてくるが、ユースケはそれに気づかず誇らしげな表情をしている。
褒められて満更じゃないらしい。
「まぁな。おれのスキルにかかればどうってことないぜ。それで、どうする? 一緒に狩りにいくか?」
「あぁ。その申し出受けさせて貰おう。ということでエリス、この依頼の受理を頼む」
おれはユースケと一時的にパーティを組む事にした。
仮にユースケの実力が大した事なかったとしても、元々おれ一人で受けるつもりだった依頼だ。
どうにかなるだろう。
「分かりました。お二人とも四等級に上がったばかりですし、二人組なのでどうかと思いますが、確かにこれでパーティという部分は問題ありませんし、アルさんはガントルさんを倒す実力者なので問題ないでしょう」
「おいおいガントルってのが誰だか知らないが、おれだって最速で四等級になった実力者だぜ? 期待してくれよ。それにしてもアルも最近四等級に上がったばかりなのか。ならおれらは同期みたいなもんだな。よろしく頼むぜ。ま、おれはあっという間に一等級まで行っちまうからランクが同じなのは今だけだけどよ」
どこまでも自信満々な奴だな。
その自身の根拠はどこからくるのだろう。
ま、それだけ自信があるのなら、少なくとも足を引っ張るようなことはないだろう。




