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黒髪黒目

「こちらがオークの討伐報酬の銀貨九枚です。素材も換金してよろしいでしょうか?」


「あぁ、頼む」


 三匹で銀貨九枚だからオーク一匹につき銀貨三枚か。

 ゴブリンの三倍だな。


「魔石が三つで大銅貨六枚、お肉は……六十キロありますね。この量ですと大銀貨三枚になります。それと、オークの持つ武器はマジックアイテムではないので、この鉈は大銅貨三枚にしかなりません。よろしいでしょうか?」


 おぉ!結構な金額になった!

 ゴブリンの時と大違いだ!

 まぁ鉈は大した金額にはならなかったが。

 嵩張るだけだし、今度から捨ててこよう。


 それにしても、四等級冒険者なら数日に一度、オークを一匹狩るだけで暮らしていけるぞ。

 酒場が賑わう訳だ。


「あぁ、問題ない」


「ではこちらが報酬となります。ご確認ください。それと、昨日預けてもらったゴブリンマジシャンの杖の鑑定が終わりました。魔力を込めると誰でも火球(ファイヤボール)が使える杖という事で、大銀貨八枚となります。お売りになりますか?」


 大銀貨八枚か。

 金貨になるんじゃないかと期待していたが、届かなかったか。

 まぁ、練習すれば誰でも使えるようになる初級魔術の火球(ファイヤボール)だし、そんなものか。

 おれには必要ないものだし、ここは金に換えるべきだろう。


「それで頼む。ちなみにどうやって鑑定したんだ?」


「ギルドの機密なので詳しい事はお教えできませんが、どういった効果があるのか調べる魔道具があると思ってください」


「そうか。気になるが詮索はしないでおこう」


 全ての素材を換金し、受付を去ろうとした時、二つ隣の受付から喚き声が聞こえた。

 剣も杖も、何も装備していない、ひょろっとした男が騒いでいる。

 碌な装備もしていないから依頼人かと思ったが、どうやら違うようだ。


「なんでおれが駆け出しの五等級から始めなくちゃいけないんだよ! おれはそこいらの冒険者より実力があるって言っているだろ! Cランク、この世界では三等級か。三等級くらいにしてくれてもいいじゃねーか! 普通いきなり飛び級スタートがテンプレだろうが!」


「ですから、規則で決まっているので……」


「なんなんだよ一体!? 飛び級スタートやお約束のギルドに入ったとき絡まれるってのもないし、ギルドマスターも出てこないしおかしいだろ!!」


「そう仰られても規則は規則ですので……」


 なにやら意味不明なことを言って騒いでるが、登録したての新人冒険者だろう。

 おれと同い年くらいか。見るからに頼りなさそうな体つきだが、本当に強いのだろうか。

 それにしても、黒髪黒目とは珍しいな。


 本当に実力があるならランクアップの魔物を狩ってくればいいだけなのに、煩い奴だ。

 ああいう輩には関わらないのが一番だ。

 さっさと帰ろう。


 あと、酔っ払い共が絡んでこないのは、おれのせいかもな。

 そんな事を考えながら、おれは冒険者ギルドを後にして宿へ帰った。

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