初戦闘
森に近づいていくと遠目に小さい緑の子供のような姿が見える。
あれがゴブリンか。
おれは時に気を張ることなくそのまま歩いて近づいていく。
「グゲェ!? ギギギ!!」
どうやらあちらさんも気づいたようだ。
こちらに向かって走ってくる。
そのまま近づいた所を息をするように首を撥ねた。
「んー。あっけない。これじゃ修行にもならねーぞ」
特に抵抗されることもなく終わってしまった。
ゴブリン一匹程度じゃこんなものか。
「しょうがない。引っ張ってくるか」
おれは悪魔を召喚する事にした。
前世で育てた悪魔たちは銃で打ち取られてしまったから、最弱の悪魔しか呼べないが、まぁゴブリン程度どうにかなるだろう。
地面に剣で魔法陣を描き、古代語を唱える。
『カース・カーラ・ル・ネムド・アビル・サムンド!!』
魔法陣が輝きを放ち、光が途切れるとそこには一体の黒猫がいた。
「ニャー!」
体長四十センチ程のそいつは猫ではない。
最弱の悪魔が擬態した存在、小悪魔だ。
悪魔はよく他の生物に擬態するが、小悪魔は主に小動物に変身する。
本当の姿は薄汚い化け物だ。
小悪魔は、前世では伝令なんかに使っていた。
手持ちの悪魔がいないとはいえ、まさかこいつに頼る事になるとは……。
まぁいい。
こいつだって育てればそのうち上級悪魔になる。
特に今は戦力を必要としてる訳ではないし、じっくり育てていこう。
それからおれは、もう二回同じ魔法を使い、合計三体の悪魔を呼び出した。
「よし、お前らに名前をくれてやる。右から順にルシウス、アンモイ、サモニアだ! せっかくおれが名付けたんだ、強い悪魔に育てよ?」
「ニャー!」「ワン!」「カー!」
黒猫がルシウス、茶色の毛をした子犬がアンモイ、カラスがサモニアだ。
「よし、お前らに最初の命令を与える! この死体と同じ姿をした生物をここに連れて来い! ちなみにこいつはゴブリンという。覚えてたら行ってこい!」
「ミャー!」「ワオン!」「クァー!」
小悪魔たちが森の中へ散らばっていった。
これでゴブリン共を引き連れてきてくれるだろう。
自分で森に入って探すなんて面倒だからな。
さて、おれはこの倒したゴブリンから素材を剥ぎ取ろう。
確か角と魔石、討伐証明部位は右耳だったな。
右耳を切り取り、魔石は心臓付近にあるらしいので剥ぎ取り用のナイフを突き刺し、腹を掻っ捌く。
「あった。これが魔石か。思ったより小さいな」
それは薄紫色をした小さな宝石だった。
この魔石は魔道具なる物の燃料になったり、魔術の触媒として使われるらしい。
おれは魔道具は、火ではない灯りを灯す"ライト"の魔道具しか見たことがない。
だがラース程の大都市なら他にも見る機会はあるだろう。
あとは角を剣で叩き切って、小悪魔共が戻ってくるまで休憩しとくか。




